映画感想「歌麿 夢と知りせば」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

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そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います

『歌麿  夢と知りせば』(1977)

江戸時代中期
世にいう(田沼時代)は、老中主座・田沼意次の権勢華やかりし頃
巷には異種多彩な人々が世の中の喜怒哀楽を牽引しておりました
博学の異端児・平賀源内、揶揄批判を笑いに転嫁してゆく戯作者たち

そして、美しい女を描かせれば右に出るもの無しと謳われた浮世絵師
喜多川歌麿

物語はその歌麿が綺麗なだけの美人画に飽き足らず
女の身の内に巣食う欲望を穿り出し、究極のエロティシズムを描こうともがく姿を縦糸に

浮世に争うかのように生きる盗賊
浮世の浅ましさに嫌気を感じる浪人

そして
そんな男たちの狭間を息苦しくもどっこい生き抜こうとする女たちの姿を描きます

1977年の作品ですから、私が中1の時に公開されたんですね
当時の評価は低かったようですが、今回初めて見て
私は面白かった

歌麿が女の色気を模索する中盤まではちょっとダレますが
田沼意知(意次の息子)が江戸城内で斬られるくだり以降、登場人物達の転落ぶりは敵も味方も巻き込んで時代という急流に飲み込まれてしまうかのようでした

田沼意次に代わり老中主座に登り詰めた松平定信の改革で店を取り潰される蔦屋重三郎が役人に叫びます
(女と男の楽しみが、お役人様には気に入らねえんですかい?そんな事が、世の中を乱したりなんかしませんよ!世の中乱してんのはあんた達じゃないですか!……あんた達なんですよ)

多くの戯作者が筆を折り、数多の芝居小屋が打ち壊され、浮世絵から色気と浪漫が失われた寛政の改革、その痛烈な風紀取締り
けれど民衆は人の心は、安らぎを涙に色気に笑いに求めて娯楽文化は根ざしてゆきます
富嶽三十六景の誕生まで今暫く
東洲斎写楽の素性とは?

そして
去ってゆく漢たち

多くのチャンバラ時代劇とは一線を画した
不思議な印象を鑑賞後に残す
実相寺昭雄 監督のケレン味を楽しむ作品だと思いました