「やるよ。そしたらあんなは助かるんだろ?」
――ゲーム参加者4人目…。人影は口に手を当て、うれしそうにあはッと笑った。
「これでやっとノルマ達成―♪」
今度は万歳までして喜んでいる。
「お、おい。お前、いったいどうしたんだ?」
「なんでもないよ。こっちの話。あ、そうだ」
人影はどこからか古びた小さな紙を取り出して、こっちにふわりと飛ばす。それは、僕が手を出すと静かに着地した。
『ユリバン・グランディエ
人生ゲーム 『鬼』役 冷泉彰 他3人担当』
どうやら名刺のようだ。
「まだ言ってなかったけど、俺の名前はユリバン・グランディエ。あれ、顔も見せてなかったけ」
そういうと人影は僕に近づいてきて、手を目にかざす。すると、さっきまではぼんやりとしか見えなかった人影が、急に霧が晴れたように鮮明に見えた。
真っ黒な髪に真っ赤な目。だけど、片方の目に眼帯をつけている。服は、銀の装飾がされた黒いコート。そのポケットからは、赤い宝石のついたペンダントやハンカチのような白い布が覗いている。
「よろしくな。冷泉彰。俺がお前をクリアさせないようにする鬼だ。ま、他にも3人も邪魔しに行くんだけどな」
「う、うん?」
「なんで疑問形になってんだよ。あ、その名刺なくさないようにしろよ?なくしたら…どうなるかわかるよな?」
「ひいぃ!?」
ドスの利いた声に情けない声を出してしまったけど、いや、でもすいません、分からないです。
人影…ユリバンは僕の心を読まなかったのか何も言わなかった。
「まあいいや。まずは、お前の幼馴染を助けなくちゃな」
と、そこでユリバンは、僕の持ってる白い本に目を止めた。
何だろう。
「その本ちょっと開いてみて」
試しに開いてみると、さっきはなかった文字が浮き出ていた。
「6時半起床、6時40分着替え、7時朝食、7時10分テレビ視聴…なにこれ?」
「お前の1日。10分ごとに大まかな内容で書かれてるだろ?これを見て人生ゲームをするんだ。履歴みたいなもんだよ」
「へえぇー」
「ここで問題です。あの幼馴染を助けて自分が幸福に生きられるようにするためには、今日のどこに戻ればいいでしょう?」
えっ?
「えっとー、朝起きるところ…かな?」
「朝起きてどうするんだ?」
「ええー、電話して、今日学校一緒に行こうって言う」
「ふん、まあまあだな」
やけに偉そうだな・・・。
「まあ、やってみればわかるだろ。これはチュートリアルだ。それじゃ実際に始める」
ユリバンはそう言ったかと思うと、手をパンッと叩いて僕の腕をつかみ、そのまま白い本の中に吸い込まれていった。
吸い込まれながら、僕は、いきなりの展開に頭が付いていかなかった。
それでも、あんなを助けられる、ということは分かった。
助けて見せる、僕のせいで死ぬなんて、そんなのはだめだ。
チュートリアルヲカイシシマス。 ジュンビハヨロシイデスカ?