家族療法の本の、アルコール依存症の項目で、家族内の悪循環を生じがちな「強迫コミュニケーション」について書かれている部分をメモしておく。
強迫コミュニケーションには、
①家族内での相互コントロール状態にある「陽性強迫コミュニケーション」と、
②本人と家族の日常のコミュニケーションが遮断されており、距離が開いてしまっている「陰性強迫コミュニケーション」
という、2つのフェーズがある。
■陽性強迫コミュニケーションによる悪循環
夫がアルコール依存症である場合を例にとると、
●夫の目の前でアルコールを捨て「今度飲んだら離婚する」と宣言するような、直接的コントロール
●夫に飲む機会を与えないように「家のことで夫に一切心配をかけないようにする」と決意する間接的コントロール
が妻によって試みられることがある。
このコントロールに対して、夫の内面は、不安、自力で断酒できないことへの自信喪失が生じ、行動面の反応として、妻に対する攻撃、飲酒しながらの自閉、家族からの逃避が起こってくる。
これがまた、妻は夫の飲酒コーントロールを更に強めるという悪循環に陥っていく。
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■疲弊している妻の入院が先
アルコール依存症の夫が自ら治療を目的とした入院をしてくれるなら簡単だが、なかなかそうはならない。
長期にわたるアルコール問題で疲弊しきった妻が本人よりも先に病院に相談に来たとき、妻は憑かれたように話し続ける。
治療者は十分に妻の話を聴いたうえで、妻の努力が限界にきていることを指摘する
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そして、妻自身の話に転換させ、疲弊と抑うつ感、不安感を取り除くための妻本人の入院治療を提案する。
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アルコール依存症の夫は、自分のせいで妻が入院することによって、非難されるのではないか?と疑心暗鬼になっている。
ところが、医者たちからも非難されずに、「妻の治療に協力する家族に自分がなる」という位置づけに置かれることで、「妻が入院中の家の方はなんとかする」との意志を示す。
中には自分の治療も希望したり、自力断酒や節酒を開始する例もある。
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入院中は、妻の個人療法と、家族合同面接による集団療法が並行して行われる。
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■治療者を介在させる家族の合同面接
治療者は、家族間の話し合いの内容に深入りせず、コミュニケーションの形式に言及する。
例①
妻が夫のアルコール問題に対して非難や怒りを示して一方的に話し、夫が押し黙っている場合
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「今回は、奥さんの気持ちをご主人にじっくり聞いてもらったので、ここですぐに答えるのではなく、次回までに考えてきてもらいましょう」と双方に伝え、次回の面接に繋いでいく。
例②
両者共に、相手を非難したり、一方的に要求を述べたりして、興奮が高まっていく場合
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家族に、上記の相手をコントロールしようとする「陽性強迫コミュニケーション」が悪循環を生じさせることを知識として提供する。
そして、「もしこの強迫コミュニケーションが始まったら、家族の中で誰か気づいた人が指摘してください」と家族全員に伝える
例③
逆に家族内の緊張が高く、自然な会話が成立しない場合
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コミュニケーション遮断状態にある「陰性強迫コミュニケーション」状態であることを治療者は家族に説明し
家系図や家の見取り図を作成したりしながら、家族内に話題提供していく形にする。
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妻本人の症状が改善し、同時に家族内の強迫コミュニケーションが消失して、健康なコミュニケーションが回復していれば退院とする。
多くのケースはこれにより家族の健康性が回復し、夫の飲酒問題も改善に向かう。
本人の症状の改善が見られたが、強迫コミュニケーションの改善が不十分な一部のケースでは、退院後も家族面接を継続し、家族内のコミュニケーションが回復するまでフォローする。
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上記「家族療法テキストブック」の、アルコール依存症についての項目で臨床現場における家族指導の方法についての記載とともに、「東京アルコール医療センター」の紹介があった。
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「東京アルコール医療総合センター」のHPには、アルコール依存症についてのご本人・ご家族向けの書籍が8冊ほど紹介されている。
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現在ブログを目にしてくださっている方の中に、アルコール依存症ご本人や、苦しむご家族がいらしたら、参考にしていただけるかもとの考えから、今回はブログを書かせて頂きました。