いつまでたっても忘れられない一日がある。

一生懸命だったけど、自信がなくて、怖くて、何もできなかったあの日・・・。



よく「後悔するなら、伝えなかった後悔よりも、伝えて後悔する方が良い」って聞くけど、今ならその意味がよく分かる。私は、伝えなかった・・・伝えられなかった・・・。



だから、今でも『あの時伝えていたら、勇気を出していたら・・・』って何度も思う。

もう15年以上も経っているいまでさえ。









―あの年の3月―



この日がとうとう来てしまった。



今日は、最近の中で一番日差しが暖かい。

学校の中も、いつもより空気がピンとしているけれど、ふんわり柔らかい雰囲気が漂っている。



とうとう、この日が来た。







先輩。



もうすぐ、遠くの街に行くんだね。

私の知らない場所。



先輩をずっと見てきたから、これまでの努力も頑張りも知ってる。

だから嬉しかったよ。先輩の合格の知らせ。



だけど、凄く凄く寂しかった。



先輩、ありがとう。

たくさんの想いをくれて。



先輩を想っていた時間は、いつまでもいつまでも私の宝物。









この卒業式が終われば・・・そして、先輩が校門を出ていく後ろ姿を見送ってしまえば、もう二度と会えない。

先輩には感謝してもしきれないくらい、ありがとうがあふれています。

私が高校生活を楽しめたのも、色んなことに挑戦して頑張れたのも、全部先輩の後姿を追いかけていたから。いつも先輩は、私の先を進んでくれていた。



いつも先輩は、私に努力する姿を見せてくれていた。



ありがとう、本当にありがとう。









先輩。



先輩のために、一生懸命想いを込めて歌ったよ。卒業生を送る歌。

そして、同じ学校で過ごした証の校歌も。

だけど、涙が勝手に出てきて、うまく歌えなかった。



卒業生が退場していくとき、必死で先輩の姿を探した。

先輩、晴れ晴れとした顔してたね。



先輩、あの時。

先輩が退場していく、あの一瞬。

私に気付いてくれたこと、すっごく嬉しかった。

でも、凄く悲しかった。



人の流れに押されて、遠ざかっていく先輩の後ろ姿が寂しくて、やっぱり涙が止まらなかった。







先輩、私は何であの時、先輩の後ろ姿を追いかけなかったんだろうって、今でも悔やんでいます。

伝えたいことがあったのに。










他のどんなことばよりも、何よりも、その言葉を先輩に伝えたかった。

今でも伝えたい。

 

ありがとう、その一言だけ。