入管でスリランカ人女性死亡の背景に「特高マインド」 70年前の法律の見直しを
2021/06/24 08:00 AERA
巨大な裁量権を持つ入管。そこでは、14年間で17人が亡くなっている。指摘されているのが入管の「体質」だ。「密室」で、一体何が起きているのか。AERA 2021年6月28日号から。
スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)の死の真相解明は3カ月以上たっても進んでいない。
名古屋入管に収容され、今年1月中旬から体調が悪化。トイレやシャワー時には職員の介助が必要になり、体重は半年で20キロ近く減ったという。
「1度目の面会の時は、2人の職員に両脇を抱えられ今にも倒れそうな状態で、『指先がしびれる』などと話していました」
次の面会では、ウィシュマさんは車いすで現れた。嘔吐してしまうため、面会中もバケツを持っていた。熱が37.5度以上あり、「体が石みたいで動かない」と訴えたという。
入管の処遇部門にウィシュマさんが点滴を受けられるよう申し入れを行ったが受け入れられなかった。
またウィシュマさんは、一時的に収容を解く「仮放免」も2度申請したが、認められないまま亡くなった。
入管施設での死はウィシュマさんが初めてではない。病死、自死、餓死……。07年以降、彼女を含め17人が死亡している。1年に1人以上、国の施設で人が死んでいることになる
高橋弁護士は言う。
「収容者を『制圧行為』と称し多数で首を絞めたり骨折するまで暴行を加えたり、瀕死(ひんし)の状態になっても放置しておく。入管ではそうした事例がたびたび起きています。・・・」
収容中に、職員から暴行を受けたとしてトルコ出身のクルド人男性(40代)が国に損害賠償を求めた訴訟で、国側は19年12月、取り押さえる様子を録画した映像を証拠として東京地裁に提出した。そこには、「痛い」「やめて」と叫ぶ男性を、複数の入管職員が力ずくで押さえつけ、「制圧、制圧」と言いながら馬乗りになって後ろ手に手錠をかけたりする場面が収められている。
ウィシュマさんの死の真相はまだ何も解明されていない。