吉村・維新への印象 | 社会の裏を晒すブログ

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作家、合格です
感性と表現力に感心

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

AERAの記事転載

作家・北原みのり氏の連載「おんなの話はありがたい」。今回は、「維新の会」について。コロナ禍で世間の注目を集めた政治家の言動に、違和感を抱いているという。

*  *  *

 目の前で起きている不愉快な現象、そこでわき上がるざわざわした気持ち、この状況に名前をつけて整理してみたいが、この現実を直視するのも気が重い……。そういう状況に、コロナ禍になってからずーっとさいなまれている。「維新の会」に対してである。

世の中の論調で言えば、コロナ禍の状況で大阪府の吉村洋文知事への注目度が高まっているという。なぜなら発信力があるし頑張っているし、ということらしい。そうなのか。さらに吉村知事の真剣な表情を「イケメン」ともてはやす声もある。同じものを見ていても、ここまで違う感想が大多数を占めるものなのか。私には、吉村知事は発信力はあるが中身がなく、その中身のなさや不安を隠すために真剣な表情を崩さずにいるように見えてしまう。というか、ポビドンヨードの記者会見のときの真剣さは、かなり滑稽に見えた。ファンの方……ごめんなさい。

 そう、あの人、政治家というよりもヒーローを演じている感じがするのだと思う。地道に人を救う道を歩んでいるのではなく、ヒーローだったらこうする……みたいな物語を演じているような。単なる東京人の感想ですけど。

 それにしてもポビドンには驚いた。多くの人が指摘してはいることだが、「ポビドンヨードを使ってうがいしている人」「全くうがいをしない人」での比較をもって「ポビドンヨードに効果あり!」とする乱暴さは、アベノマスク級の理不尽であろう。それでもヒーローが好きな人たちからは、「何もしない(総理)よりマシ」と擁護する声も少なくなかった。信頼できない情報を堂々とまき散らすヒーローの真剣さのほうが、おぼっちゃまの意固地よりも私には怖いのだけれども。

 なによりポビドンヨードの記者会見時の吉村知事の隣に座る松井一郎・大阪市長のだらしなさには言葉を失った。いすにだらんと座り、腹を突き出しふんぞりかえり、威張ったように「無理な買い占めをしなければ、(うがい薬が)なくなることはあり得ない」と松井市長は言ったのであった。そりゃそうでしょうよ……とその場にいた記者の誰もが心の中で叫んだに違いない。まるでヒーローを演じる青年を子分に従えた人口数十人の町内会みたいな記者会見(全国の町内会の皆さん、ごめんなさい!)に、なぜ日本中が振り回されなければいけないのでしょうか。

 8月12日配信の朝日新聞デジタルの連載で「吉村知事人気で『東征』一気、維新の胸算用」と題された記事を見つけた。いかにもホラ貝が聞こえてきそうな見出しである。こういう戦国武将感のある政治報道も、ヒーローを間違って育てる風土を生んでしまったのかもしれない。中身よりも、政局や組織の力関係を論じたがる日本の政治記事をはじめ、オジサンたちはヒーローが好きなのだろう。

 そう、私の維新への違和感は、あの党の男性政治家たち(驚くほど女性が少ない政党ですよね。ほぼ男子校だ)の言動が、市民を支えるのではなく、「オレの夢を一緒にかなえてくれ」……と市民に要求するかのような、何か勘違いをしているように見え、それがどこか無自覚なDVの振る舞いに似ているからだろう。俯瞰(ふかん)すれば滑稽だけれど、真剣なのでけっこう厄介。

 ちなみに西の知事がポビドンヨードを掲げた前日、東の知事は「家族で歯磨き粉は共有しないで」と言っていた。歯磨きとかうがい薬とか、知事が真剣に報告するような話なのかと暑さでボーッとしながらも、男のヒロイズムに巻き込まれる政治に警戒心が深まっている。



付録 私見

吉村の表情・発言は、ゲシュタポの将校を連想する
吉村のポビドンヨード発言は
”インサイダー”の特質も備えている