暖かくて優しいこの町で僕は
変わらない景色
変わらない日常
退屈な日々
何も気にせずただ過ごしてた
今日もいつも同じように
過ぎて行く
過ぎて行く
と思ってた
町にできたちょっとした綻び
気づかずに


そんな時にふと君が来た
この町は暖かく優しいね、と
君は寂しそうに言っていた
それを聞いた僕は
君の内側少し気になったんだ



町のちょっとした綻び
大きくなって
見えなかった暗闇
見えてきて
町がどんどん暗く
染まり始めた
あっという間に
晴れ渡る空も闇に染まってしまった
哀しみ色に染まってしまった
もう暖かさも優しさも何も無い
変わってしまった
変わってしまった
哀しむ人々目の前に
僕は何もできず立ち竦む
その時君は手を差し伸べた
哀しむ人々へ手を差し伸べた
哀しみ共に分かち合おう、と言って

それを見た僕は動き出す
この町にまた光が灯るように
この町がまた暖かく優しい町になるようにと願って
見たくないもの沢山あるけれど
その度に足が竦むけれど
見ないフリしても何も変わらないと
君がそう教えてくれたんだ
そして僕と一緒に動いてくれた
君はいつも笑顔で優しくて
どんなに哀しみが目の前に横たわろうとも
町の小さな光のように
人々の心を暖めていたね
君は気づいていないだろうけど
君はこの町に光を灯してくれたんだよ
君がこの町をまた暖かくて優しい町にしてくれた
僕の心にも君の光が灯ってるんだよ
気づいてるかい?
僕が君を想っていることを


町が落ち着いてきた頃
君は急にこの町を去っていった
今にも泣きそうな顔で
寂しくなんかないと
強がって笑顔作ってたね
君は本当に強い人だ
僕よりもずっと ずっと
今の僕じゃ君と共に行けないのは
分かっているから
僕も強がって笑顔作って
君にさよなら言ったんだ
でも心では
必ず会いに行く
そう叫んでいたんだよ



君を見送り
僕は僕の旅に出る
君が今までしてきたように
色んな町を渡り歩くんだ
色んな景色見て
色んな人と関わり
色んな思いを知り
全てを感じて
強くなるよ
君を守っていけるように





ある町に辿り着いた
もう幾つ目の町なのか分からない
この町も哀しみ色に染まってる
その中に懐かしい人影
暖かくて優しい町だと寂しそうに言っていた
あの横顔を思い出す
泣きそうになりながら必死に笑顔作っていた
君を思い出す
君は今にも眠ってしまいそうに横たわっていて

僕は堪らず君の名を呼び続ける
細い身体揺すっては目を覚ましてくれと願って

そうしたら君は眠たそうに目を開けて
弱々しい笑顔作って涙を流したね
初めて見た君の涙は
とても寂しそうで
でも温みに溢れていた
君は最期に何か言いたそうに僕の目を見て
眠りについた



伝えられかった
ありがとうとさよなら
そして君への想い
この胸に抱え僕は進み続けるよ
君がそうしてきたように
寂しくないと言ったら嘘になるけれど
でも僕は強がって笑顔作って進んで行くよ
今でも僕の心には君の光が灯っている
僕は独りじゃない







時が経ったある日に
僕が辿り着いたこの街は
寂しさと哀しみ色で充満したような
重くて暗くとても静かな街だった

光を知らないこの街の隅に
蹲る子を見つけたんだ
どこか懐かしくどこか切なくて
何故だか僕はあの暖かくて優しいあの人を
思い出したんだ
僕は堪らず手を差し伸べた
そうしたらその子は驚いた様子で僕を見る



でもね、僕も驚いたんだよ




だって僕の差し伸べた手の先にいたのは
紛れもない君だったから
僕に会う前の
あの暖かくて優しい町に来る前の
君だったんだから


そうして僕は君を抱きしめてこう言ったんだ

「もう大丈夫、君は独りじゃないよ。」と