家に帰ってきたら、1通の葉書がポストに入っていました。
見覚えのある、懐かしい文字・・・。
専門学校時代の校長先生からでした。

以前新聞社にお勤めだった先生は、私たちの国語表現のクラスを担当していました。
いくつも作文を書かせられたけれど、以前より”モノ書き”になりたいと
思っていた私は、案外とその授業が好きでした。

学生時代から、頑固で自分の意思を曲げようとしない生徒だった私は、
就職を決める際に、先生にかなり心配を掛けました。
と言うのも、どうしても入りたい会社があって、”そこ以外受けません!”と公言していたのです。

先生からは、”そこは募集をする保証がないから、他を受けなさい”と、
何度も何度も説得されましたが、私はその都度頑なに拒否。
先生からすると、本当に頭痛の種だったと思います。
(結局は、ラッキーなことにそこの会社で募集があり、無事入社できましたが)

”君は真っすぐなところがいいところだけど、それが欠点でもある”と言われ、
卒業後も何かと心配をして下さり、何度か食事をご一緒させて戴いたこともあります。
最近は、めっきりお会いする機会もなく、年賀状のやりとりだけになってしまっていました。

今回のお葉書は、転居のお知らせでした。
”この期に及んでの闘病生活から決断致しました”と書いてあります。
私が知らない間に、ご病気をされていて、長年慣れ親しんだこの場所を離れる
決断をされた先生の気持ちを考えると、何だかやるせなくなりました。

専門学校を卒業してから、もう9年になります。
私の中で、この9年間は何も変わらずに過ごしてきたような気持ちでいたのですが、
こうして周りの変化を感じると、9年と言う時間の長さに、改めて驚きます。

私の気づかないところで、確実に時間は流れ、状況は変化して行く。
当然のことながら、年齢も重ねて行く。

先生の体調の変化を知り、このままではいけない!と背中を押された気分です。

奥さまのお墓が、こちらのお寺にあるようで、”私も最後は戻って参ります”と、
その文章は結んでありました。

”死”を意識して生きること。

それは同時に、私に生きていることを実感させました。
過ぎてしまった時間を取り戻すことは出来ない。
だからこそ、やりたいことは諦めるべきではないし、今出来ることを先延ばしにしてはいけない。
自分の気持ちを伝えなければいけない。
守るべきものを大切にしなければいけない。
やらずに後悔するくらいなら、やってみてから失敗と気づいた方がいい。

先生は、残りの人生で確かめたいことがあるとおっしゃいます。
年齢を言い訳にせず、貪欲に物事に取り組んで行く姿勢は、ホントにカッコいいと思う。

ご自身の生き方を通じて、私にまた大切なことを教えてくださいました。

これから、先生に手紙を書きます。
”書くこと”が、一番私らしい方法だと思うから・・・。

ここを離れても、いつまでもお元気で暮らして欲しいと、心から思います。



Ayu