たまに、不思議な感覚に襲われる。


全ての物の色彩が薄く見える。


色鮮やかに見えるってのと逆。


いつもなら青空眺めて気分よくなるのに、空も灰色に見える。


空を見ても、景色を見ても、何も思わない。


何も考えず、ぼーっと歩いてるのに、すれ違う人のTシャツの文字につっこみを入れたりする。



「YOU ARE HERE 」ってなんなんだろ…とか。


どーでもいいのにね。


自分が急にからっぽになったみたいで。



周りの風景すら自分と別世界な気がして。



きっと淋しいんだ。


誰かに隣にいて欲しくて。

どーでもいいことで笑いたくて、心から笑いたくて。

淋しいよって泣きたくて。

誰かの胸で思いっきり泣きたくて。


ただ、誰かのそばで甘えたい。


誰かに私を認めてほしい。


家族でも友達でもない、トクベツな誰かに…。



「誰かって誰だろう?」


……


どうしてあの人の顔が浮かぶんだろう。


とっくに過去にしたはずなのに。


ふと手の中で唯一感覚が伝わるモノ。


ひんやりと硬い感触。



こんなもの、過去の遺物なのに、どうして今更掘り出したんだろう。


昔みたいに、指にはめてみたりして。


バカみたい。



そう思いながら、なぜか外せない。


指輪の感触だけが、確かなものだから。