さっきまでスマホ画面に映し出されていた
2才の孫が
トボトボと背中を向けて、
肩を落として、
壁際まで歩き、
固まっていた。

呼びかけても
下を向いたまま。

産まれたばかりの従姉妹との
画面越しの初対面の行動は、
予想とは違った。



熱海の盛土問題。
夫が
昔だけどパキスタン人も日本人と組んで、
その仕事で億単位の大儲けして
パキスタンに帰った。
安い土地を買い埋め立てれば、
土地代よりもお金が稼げるんだよ。

そういう類の話をする
いつもの口ぶりに
感じることがあったから、

悪いことしても
お金稼いだ人を羨ましいと
思っているでしょ?

夫はすかさず、そんなことはない。
一緒に日本人もやっていた。
日本人がそそのかした。
運転手だったパキスタン人を誘った。
あのパキスタン人の兄弟は日本で真面目に鉄工所で働いてる。
人それぞれで、パキスタン人にも良い人も悪い人もいる。

ああ、
なんで一旦本当の気持ちを
言わないのだろう。
上手いことやったな  と。

でも、
それは今回のように、命に関わったり、迷惑かけたり犯罪だったりすることもあるから、やってはいけないし、自分はやっていなくて良かった。

というような過程があってもいいのに。



泥棒でもなんでも稼いで逃げた人間を羨ましそうに話してしまうのは、
本当の意味で 
悪いことをしてはいけない。 
神様に怒られる。
とは思っていないのだろう。

私はあの拾ったバッグの
お金をネコババしていたら
恐ろしいことが起こっていたと信じている。

だから盗むことはいけない 
というありきたりなことが
更に心に刻まれた。


熱海の土石流で命を落とされた
遺族の方はインタビューに答えた。

「ありきたりだけれど、もっと親孝行しておけばよかった」

ありふれた文言だけれど、
その言葉が私の胸は響いた。
感じて、悩んで、苦しんで。
私の胸にもそれはあるから。


過程を踏まない耳障りの良い言葉たち。
通り過ぎて行くだけで、
心に刻まれるはずもない。