自分が愛情をかけた動物こそを
心が痛むけれど、
クルバニするように神さまが言ったそう。
でも
クルバニを繰り返すことで、
心が痛むことを忘れてしまうのじゃないかしら?
だから
他の痛みがわからなくなるのではないかしら?
少年が可愛がっていたヤギの口が突然開かなくなった。
このまま口を開かなければ、ヤギはやせ細って死んでしまう。
大人たちは知恵をしぼった。
『暗い小屋に閉じ込めればいい』
暗闇が怖くて声をあげて鳴くだろう
でもヤギの口は閉じたまま。
『ヤギの耳を切り落とせばいい』
痛みに耐えかねて声をあげて鳴くだろう
ヤギの両耳は切り落とされたけれど
ヤギの口は閉じたまま。
このままだったら死んでしまう。
死んでしまったら、食べられない。
ヤギはそのままクルバニされた。
泣きじゃくった少年は
可愛がっていたヤギの肉をかわいそうで食べなかった。
強い悲しみを何度も味あわせることで、
本来の人間の感情は麻痺してしまうみたい。
少年は神さまのために喜んでクルバニできる大人になった。
私には神さまの思惑がわからない。