結婚して20年を過ぎたってアイツの支配は変わらない。


40歳を過ぎたって。

私がアイツより年上だって。


機嫌を損ねるようなことをした私には、

汚い罵声がお似合いだとでも言うように。


聞きたくもない罵声なのに、

周囲に音が漏れないようにするために、

携帯電話を強く、強く、耳に押し当てる。


「でも・・・・」はいけない。

それはルール。

罵声がより大きく、より長くなるだけ。


電車に乗らなければならない距離の外出にアイツは激怒したのだった。

その瞬間から、すべてのうまくいかない原因は、私の上にのしかかる。



かろうじて集まった

夫のとの楽しい時間も笑い声も、がらがらと崩れて。



20年前と何も変わっていない。



たくさんの勉強会に出席したって、

ラマダンをやり通したって、

変わってない。




彼女は配慮もせずに語りだす。


娘達の結婚相手を、親が選ぶこと。

その相手がイスラム教徒でおそらくはパキスタン人であることを

抵抗なく、疑いなく、そして苦悩も?なく?


イスラム教を勉強していない男性と結婚することは不幸だと。

だから、私たちが勉強しなきゃあダメなのよ!って。


居心地の悪さに言葉を濁す私に、

目玉以外をまっ黒に覆った彼女は気がつかない。



勉強をしているらしい男達に希望を見出せない私は、

だから、彼女に線を引いた。