背の高いビルは柔和な感じさえ漂わせていて。
真正面から入る面々は穏やかで。
留置されている人への面会さえ、そこいらの役所よりも笑いがこぼれてる。
波風なんて立ててほしくない。
真実なんて関係ない。
書類さえ完璧なら、面倒くさいのはご勘弁っていう感じ。
偽造の書類であったって、
人の心を踏みにじったって、
建前だけが揃っていれば取り繕える、
虚構で成り立っている世界のよう。
バスから流れる顔、顔、顔。
嘘つき、ペテン師がたくさん混ざっているはずなのに。
笑顔のウラに思惑を隠しているっていうのは確実なのに。
私の睨みはまるで異質。
夫の用事が済むまでの間
立ち寄ったトイレの鏡には、
白髪の目立ち始めた私がいた。