画面の年老いた女性がその時の恐怖を語っていた。
ハンドバッグをブラジル人女性二人に奪われそうになったこと。
その時の恐怖といったら、殺されるかと思ったほど。
ああ、あの事件だな。
この不況で日系ブラジル人たちが大量に解雇されている。
確か彼女たちにはお子さんがいて、国へ帰るためのお金が欲しかったと新聞に書いてあった。
子供たちはどうなるのだろう・・・
彼女たちもカワイソウだよ・・・
目の前の被害と恐怖を訴える女性よりも、私の意識は彼女たちに傾いていた。
でも。
女性のバッグには700万円以上の店の売り上げた入っていたと聞いた時、
自分の迂闊さに気がついた。
こりもせず同情してしまった自分の甘さに馬鹿をみた。
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離婚後に子供の親権を取ろうとした調停で、
彼女のご主人はさながらインド映画の三文台詞を詠い、演じたそう。
彼は全身全霊をこめて、涙を流し絶叫し、彼女と子供たちへの愛を訴えかけた。
調停員は、目の前の彼の熱演にほだされる。
彼女の積み上げてきたものよりも、
目の前の涙と絶叫が調停員の心を動かした瞬間だった。
彼女はあきれたように調停員は馬鹿だと吐き捨てた。
負けた彼女には、そんなことしかできなかった。
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どうか今一度本来のものを見失わないように、戒めたい。
私自身に。
ここを訪れる人に。
そうでない人に。