象の背中~旅立つ日(楽曲JULEPS)
かわいい象のアニメーションが朝の画面に映し出された。
夜、雑踏のサラリーマンが街頭のスクリーンを見ながら、足を止める。
場面は、ハンカチで目頭を押さえているシーンに変わっていた。
子供たちが登校してしまって、
夫と二人の朝食の終わり時。
その歌声を聴きながら、画面に食い入り、
視線を合わすこともなく、
二人で目頭を熱くした。
涙の訳を悟られたくないからと、一足先に席を立ち、
背中を向けて、肩で涙をぬぐったのは、私。
だって、死を悟った象 と 大病を患った夫 とを重ねたから。
私が、夫と子供たちに、先に死に行く者として、姿を重ねたから。
鼻をすすり、声を詰まらせている背後の夫は、とうとうしゃくりあげた。
「お父さんやお母さんに変われるものは、なにもないよ」
ああ・・・そうなんだ。
これが決定的な違いなんだ。
私の涙はぴたりと止んだ。
歌の間、年老いた母も数年前に亡くなった父も私の脳裏に浮かばなかった。
歌の間、夫の頭には、私たち妻子のことが、なかっただけのことだった。
良し悪しでもなく、正誤でもなく、あきらかな違いだった。
でも?
だから?
それでも、あえて、言わせてもらおう。
長年パキスタン人男の妻をしてきた私は、言ってやろう。
腹を突き出し、ひげを生やし、えらそうに怒鳴りつける大男に、
わがままで、駄々をこねる馬鹿ガキが、泣きわめく姿が重なるよ。
欲しがるものをただ与えてご機嫌をとる育児の招いた結果だとも偉そうに言わせてもらおう。
もちろん甘やかしたのはお人形さんの女たち。
人形女になだめられて、機嫌を直した馬鹿ガキは、何にも変わらず、何も変えずに
GOING MY WAY.
だから、私のあきれたモードは急上昇。
だから、私はもう魔法にかかれない。