『彼女は離婚をしたいんだって。。。』

夫は理由がさっぱりとわからないかのように、そのことを告げた。

私に同意でも求めるかのように。


私の口から,無意識に言葉がこぼれてた。

『それでいいんじゃない?それがいいんだよ』


突然に視力を失った彼女が彼女の夫Ⅰとともに帰国したのは、

夫と一緒の飛行機だった。


そもそも無理があったんだから・・・

言葉の通じない異国の小さな部屋に彼女が閉じ込められて、

何も出来ずに、

一人ぼっちでいるくらいなら。

せめて光が感じられて、ぬくもりのある声が聞ける場所の方がずっといいと思ってるはずだもの。


彼女が普通にやりたかったことは、

困難に、あるいは不可能になってしまったのだから。


夜中に突然起き出して、死にたいと口走ったことがあるということを、

以前から聞いていたからこそ、

私は彼女の希望が通れば良いと思っている。


I は大きな図体で、小さなかわいい彼女を

不格好に、でも全力で愛してるのが分かるのだけれど、


彼女は I の前の妻に嫉妬をし、

何も出来なくなってしまった自分に価値が見出せなくって、

やってもらうだけだけでは、幸せではなくって、

何もしてあげられないことに対して、とても苦しんでいるのだから。


彼女を好きな部外者の私は、

彼女の願いが通れば良いと思っている。


彼女が我が家を訪れた日、

玄関まで私が彼女の介助をした時に、

間に割って入ったのは、あの腕白坊主のチビなんだけれど、

両手を開いて、私の前に立ちはだかった。

チビだって、全力でママを愛してた。


だから、

神さま、

彼らの愛が、ちょうど良いところで、折り合いをつけられますように。