夫の帰国数日前から、義理の弟はめっきり姿をあらわさなくなった。


もちろん夫の帰国後に、夫のいる時間に上がり込むことはあったけれど。



パキスタンからの夫の電話は、優しい声だったから、


あえてコトを荒立てたくないという優柔不断な思いと、


お友達を自宅に呼んで騒いでいたことを、


弟の口から夫にばれて欲しくないとも思っていたから、


義理の弟への対応は、なんとなくそのままになっていた。



夏休み最後の夜、

次女の夏休みの工作の仕上げに使う一本のねじを無くしたために、

夜、弟の住む仕事場へ夫と車で乗りつけた私と娘たち。


夫と次女がねじを探している間、

長女と私が車に残されていたときに、

弟が”ビリヤーニを食べる?”と声をかけてきた。

食べ物にわだかまりのある私は困惑気味で、下を向いたままだったけれど

娘は素直に”欲しい”と答えた。

だって私たちはすっごくお腹がすいていたから。



”辛すぎちゃったかも・・・”と皿に盛られたビリヤーニにはスプーンが二つ。

自分が作ったことを強調し、”プロみたいでしょ”と彼は得意だった。

・・・一口食べて、塩が足りないと思った・・・

私の心を見透かすかのように”ちょっと塩が足りないけれど・・・”と彼は言葉を付け足した。

娘が”コレは日本のお米なの?”と質問する。

・・・だって、長米がくずれてるもの・・・

”ちょっとやわらかく炊いちゃった・・・”


おいおい、それでもプロのつもりなのかい?


プロの味には程遠ーいビリヤーニなんだけれどもね、

私はけっこううれしかったんだ。


おみやげ用にいただいたビリヤーニを、子供たちは食べようともしなかった。

だから、ほとんどを食べたのは私だった。


おいしい、おいしくないに関わらず、

作ってもらった食事は、掛け値なくうれしくて。


なんて単純なんだろう、私。


だから弟のことは根本的解決には至っていないのだけれど、


とりあえず・・・ま・・・お腹もいっぱいになったから・・・良しとしておこう。


勃発したら、それはその時に・・・ということで・・・


つまり、あくまでも、解決はしていないんだけれど・・・ね。