夜道で見つけたかぶと虫。

彼女はうまく隠れていたのよ。

どうして、見つかっちゃったのかしら?と、

今でもいぶかしげに思っているはず・・・。


昨夜の午後九時に、自転車で家を出たのは、

朝から出かけていったきりの夫から、

午後九時にかかってきた電話の内容が、

”ご飯は食べて帰るから。11時ごろになるから”だったので、

電灯のない夜道がけっこう続いているのだけれど、

まぁいいや・・・・

外に出たら、思いのほか気持ちがよくって、

トイレットペーパーでも買おうとふっと思った。

そして、ペダルをこぐ足も軽やかだったし、

ユーミンのベルベットイースターを口ずさみながら、

見上げた月は明るかった。


図書館をすぎたすぐのところ、

街灯があって、

自動販売機の明かりが照らす場所に、

ゆっくりゆっくり歩いていたのはセミの幼虫だったのだ。

・・・人間の手が触ったら脱皮が出来ない・・・

誰から聞いたのか、本当なのか、ウソなのか、

そんなことは知らないけれど、

彼は自分が生まれた穴から這い出て、

どうやらすぐ近くの高い場所に登れないでいて、

歩道のを歩いているようで、

歩道にいればふまれちゃうことだってありえるのだから、

彼が歩道と車道の間にある桜並木の内の一本に

たどり着くまで見届けるつもりだったのだけれど、

歩道のコンクリートと桜の植わっているところのわずか5センチにも満たない段差に苦労をしていて、

うろつく蟻が私は憎らしかった。

彼が転んだとたんに襲い掛かるバカ蟻でないことをねがいつつ、

近くにある木の枝を拾って、彼に前に差し出した。

彼が乗り移ったところで、桜の木に密着させた。

夜だというのに・・・蟻は夜行性なのかしらん?・・・桜の木を上へ下へ忙しそうだ。


ここでよかったのかしら・・・

電柱の方が良かったかしら・・・


スーパーの閉店時間も気になるし、とりあえず買い物を済ませての帰りのことだから、せいぜい20分もかからない時間だと思うんだけれど、桜の木をくまなく探したのに、彼はいなかったよ。

私の予想以上のスピードで登ってくれていたらいいのだけれど・・・


桜の木に顔をくっつけて捜しているときに、

普通は桜の木にはいないよね?

かぶと虫のメスが隠れてた。


まだまだちいちゃいメスのかぶとを子供たちに見せたくって。


夜中の突然の激しい雨に、

脱皮姿の彼が頭をよぎたのだけれど。





知り合いの子供が虫かごを持って遊びにきた。

オスのかぶと虫、メスのかぶと虫が入ってる。

子供は飼育をしているという。

だから、子供にあげることにした。


次女が澄んだ大きな声で言う。

ママ、かぶと虫が交尾してる!



げ・・・・・

パパがいなくて良かったよ・・・・