パキスタンと日本、どっちが好き?
あちらの国の子供は無邪気に質問する。
私は答えた。
どっちも。
本当にそう思っていたから・・・
そして、私は答える。
どっちも・・・
大人の裁量で、質問をする子供のことを落胆させたくないから、ちょっぴり嘘をつく。
長女が一歳半の時。
そのときは2度目のカラチだった。
夫は田舎のおじいさんの交通事故の見舞いのためにずっといない時だった。
女王さまがまだ、12歳ぐらいで、学校以外の外出を制限をされた頃だった。
家にお友達を連れてきた。
カワイイ、おとなしい姉妹だった。
話しかけても、ニコニコとはにかみながら、小さな声で答える彼女たち。
彼女たちは家庭の事情でカラチを去り、田舎に帰らなければならないのだという。
そして、
別の日に再び彼女はお友達を連れてきた。
はきはきとものを言う、大勢の兄たちに囲まれた末っ子の女の子。
バングラデッシュから来たという彼女は利発な感じの子供だった。
片言のベンガルを話した私は、彼女との話が弾んだ。
彼女が帰ったあとに、女王さまと義母は私に話して聞かせる。
彼女は1人でバスに乗って、あるいはタクシーで夕方まで外出できるのよ。
それは、彼女をうらやましがるのではなく、むしろ彼女をふしだらな女の子だと言いたいがために、私に告げた。
そして、子供だった女王さまが私に問うた。
このあいだの女の子と、今日の女の子とどっちが好き?
どっちも。
本当にそう思ったから。
どちらも好きだったから。
けれど彼女は続ける。
そうじゃなくて、どっちか1人だけ選んで。
選ばなくてはならないらしい。
だから、選んだ。
義母が、
バングラデッシュの女の子が帰ったあとに、長女がいつも遊んでいる、ゴム製のお人形を洗いなさいと他の娘に言いつけたから。
前回のパキスタンの姉妹が帰ったあとには言わなかったから。
私の思い過ごしなのかもしれない・・・けれど。
そして、答えた。
バングラデッシュの女の子の方が好き。
私の中にあった、小さな反骨精神が、そう言わせた。
その答えを聞いて女王さまと義母は、目配せをしあった。
私を値踏みしたのだろう・・・そう思った。
それでいいと思った。