口にしてしまうと、

裏切られるということを繰り返してきたから・・・・




でもとりあえず、

思い切って、

声にしてみよう。


やっぱり、夫のことが好きみたい。



ちょっとけだるい原因は、


昨日彼女を入院させた病院で、


エレベーターがなかなかやってこないものだから、


夫と二人で、

彼女の病室へ戻ろうと、

7階までの階段を上ったからだった。


こんなに段数があったけ?

一つ一つの階段が高いのか・・・

上りはじめてすぐに後悔したけれど、

息の荒い夫にも負けたくないから、がんばった。


彼女の病室に戻った私は、

彼女に代わって、

ベッドに横たわりたいほどに疲れきっていた。

すっごい運動不足だね。

おかげで今日は下半身がばらんばらんになるほどに痛いんだから、情けない。



4時間送れた飛行機のせいで、


ご主人が病院に到着したのは午後6時。


病室に入ってきたご主人に気がつかずに、談笑する彼女を


私たちは、微笑みながら眺めていたよ。



彼らのいきさつにはいろいろあったけれど、


その場はほほえましい光景だった。



こうやって慣らされていくのもしゃくなんだけれど、


その一場面を切り取ってみたとすれば、


まあ、いいのかな・・・・というより、


そういうものなのかな・・・と


とりあえずの平安のなかに、


今、いられることで、私は受け入れよう。




だから、


身体はものすごく疲れたんだけれど、


心は落ち着いていたんだな。



夜、帰宅途中の車のなかで


パキスタンの古い歌を繰り返し、カセットテープに合わせて歌う夫。


私と同じで下手くそなんだけれど、


ほんわかムードが漂っていた。



明日のことはわからないから、


いえいえ、


ちょっと先のこともわからないけれど、


今、言えること。


彼のこと・・・好き・・・・みたい。




彼女がトイレで使う、ペットボトルに水を足そうとして、


トイレットペーパーホルダーに


ガツンと頭をぶつけた時に出来たたんこぶが、


まだ、ズキズキ痛んでる。


目の見えない彼女だから、


私のドジは見えていないはずだけれど、


うめき声すら漏らさなかった私だけれど、


たった二泊三日の滞在中に、


すでに、マグカップとお皿を割った音は聞こえているはずだから、


彼女はすでにお見通しかな?