あの国を訪れて、

 

夫の実家を出て、

 

夫の姉の住む地方都市へ向かった。

 

そこで1週間滞在して、

 

帰国をする予定。

 

迷路のように細い路地

 

窓がほとんどない、

 

陽の射さない家。

 

ひんやりして、じめじめして、気持ちが悪かった。

 

その頃は無理をして笑うことが出来なくなっていた。

 

つまらなくても笑顔を作り続け、

 

ピエロのように振舞うことを、

 

自分の使命だとでもいうように、

 

おどけていたのだけれど。

 

部屋に閉じこもるようになった。

 

一人の時間が欲しかった。

 

でもそんなことは彼らには通用しない。

 

人の気持ちが察することが出来な人たちだから、それを口にしない私に非がある・・・とういうことだろう。

 

悪いのはきっと私だろう。

 

言わないのが悪い。

 

説明する気力もなかった。

 

帰国の日を指折り数えた。

 

誰もいないとき部屋の扉を蹴った。

 

夫自身も言っていた。

 

・・・・一週間は長かったかもしれない・・・・

 

その言葉を信じた。

 

夫に打ち明けた。

 

このまま、ここにいるのが、辛い。耐えられない。ホテルに泊まらせて。

 

夫は言った。

 

そんなこと言えないよ。

 

 

 

 

数日後食事の後に

 

姉の前で夫が突然何の脈略もなく言った。

 

”アイシャがホテルに泊まりたいんだって”

 

夫の冷たい視線が私を射る。

 

私だけが違うサイドに立っていた。

 

 

不意打ちを食らった。

 

言葉を捜す。彼女を傷つけないために・・・うまい言葉はないだろうか。こんな時でも相手の気持ちを思いやる私は大馬鹿だ・・・・・・・・・った。

 

”あなたたちに迷惑をかけているのが心苦しい。私たちのためにいろいろ大変だと思うから”

 

本当の気持ちは、口が裂けても言えなかった。気持ち悪いから・・・・・とは言えなかった。

 

 

姉が私を大げさに抱きしめた。

 

”私はあなたたちが来てくれてとってもうれしいのよ。気にしないでいいのよ、そんなこと。

 

私たちがもし日本に行くようなことがあったら、あなたの家に泊まるでしょ?お世話してもらうでしょ?

 

それと同じことなのよ。私はあなたたちを愛しているの”

 

 

こんなに近くにいるのに、

 

これほどまでに分かり合えないなんて・・・・

 

 

 

 

お姉さんのところに行ったら、毎日家族だけで外食して出かけようねと言っていた夫がしたことは、

 

夜になったら停電になってしまう質素な遊園地もどきに親戚交えて一回連れて行っただけだった。

 

 

 

空港に向かう前に作ってくれた

 

 

お決まりのチキンカレー

 

 

食べられなかった。

 

 

吐き気がした。

 

 

身体が拒否した。

 

 

パキスタンを拒否した。