暗い道を、肩を並べて歩く


待ちに待った花火大会


タクと二人で花火大会の会場へ向かっていた



「タクも浴衣着れば良かったのに」

少し見上げて顔を見つめた


タクはこちらを見ることなく

「浴衣着たら、あとあと大変だろ?」

と言う



『あとあと大変』

とは、着崩れや着替えのことだろうか


そんなことを気にしていたら、浴衣など着られない


そう言いたかったが、年中行事を好まないタクが出かける気になってくれただけで良い


ここで下手なことを言って機嫌を損ねたら、花火大会など一生一緒には行けないだろう



響きの良い下駄の音と、気だるそうに歩く靴の音が交わる


言葉少なに会場へ向かう道すがら、その音が言葉を交わす代わりに会話をしているようだった





会場へ近づくにつれ、増えていく人


みな、目指す場所は同じ



人と人の間を縫うように前に進んで歩く


「で?どの辺が見やすいとかあるの?」

家から出て、ようやく会話になりそうな言葉がタクから出た


「あのね、こっち!こっちで去年は大ちゃんと見たんだよ」

そう言って先を歩くと、後ろから

「また大ちゃん……」

と聞こえた気がした


「何?」

と言って振り返るが

「何でもないよ」

と言って後ろを歩く雰囲気は、明らかに何でもないといった感じではなかった



「タク、あっちの方が良いかな?」

川原の土手を目指し歩こうとしてまた振り返ると、タクの姿が無い


こちらへ向かってくる人波の間からも、タクの頭は見えなかった



こんな一本道ではぐれることもないと思うが、携帯を取り出してかけてみる


「もしもし、今どこ?」


『ど……って、お……』

電波が悪いのか、ぶつぶつと声が途切れてよく聞き取れない


「ねえ、タク?」

問い掛けたところで、電話が切れた


慌てて掛けなおそうとするも、充電が切れて電源オフ


はぐれたことに不安は無かったが、連絡がつかなくなったことでとたんに不安になった



周りを見渡し、タクの頭を探す


上の方ばかり見ていていたため、人にぶつかった


「あっ!すいませ……」

と言って後ろに身を退くと別の人に当たり、体勢を崩して足が一歩前へ出る


すると、その足の上に歩いてきた人の足が乗る


「………っ!」


痛みで声も出ず、足を押さえてうずくまった



「ごめんね!大丈夫かい?」

と、足を踏んだらしき人が声をかけてきたので顔を上げる


視界に入ってきた人物は、40代くらいの中年男性



痴漢にあって以来、中年の男性が怖くなってしまい、心配そうに見つめる男性に

「大丈夫です」

と言えずに固まってしまった



「君、大丈夫かい?」

再び声をかけられるも、声が出ない



「大丈夫ですよ」

と言ったのは、自分ではなかった



頭上から声がしたので、体を反らすようにして見上げると、タクの姿


「たっくん……」

見慣れた顔に安心し、つい昔の呼び方で呼んでしまった


しかしタクには聞こえていないようで、心配そうにしている男性に

「自分がついてますから、ご心配なく」

と言うのだった



中年男性を見送った後、立ち上がり

「どこに行ってたの」

とタクに向かって言うが、急に視界が暗くなる


あれ?

と思っているうちに、足元がおぼつかない



側にいるであろうタクの服を掴むと、体が宙に浮く感覚になった



ふわふわと揺れる感じがする


何だろう?

タクはどうしたんだろう?

そんなことを思っているうちに、視界がはっきりしてくる


といっても、夜で暗いために、視界に入る色はほぼダーク色


けれど、優しく見下ろすタクがいることは確認できた



「落ち着いた?」

タクの声にうなずぎ、ふと今の自分の状態を確認した



タクの顔がずいぶん近く、顔を横に向けると草の上に投げ出されたタクの足が見える


左手で何かを掴んでいるようで、左手を見てみると見覚えのあるシャツを握り締めていた


そしてそのシャツを下に敷き、寝転ぶ自分の姿



どうやらタクの膝枕で横になっているらしい


「ご、ごめん!」

起き上がろうとするも、タクに

「だぁめ!」

と言われ、額を押さえ付けられた


「横になってて良いよ」

そう言うタクは上半身タンクトップ一枚


先ほど掴んだ服は、まぎれもなくタクの物だったようだ



「お前、うちに来た時にお祭りではしゃいで具合悪くなって、毎年おんぶして帰らされたよな」


暗闇でよく見えないが、バカにしたようなそれでいて優しくゆるむタクの唇が目に浮かぶ


「まあ、今回はおんぶじゃなかったけど」

前に腕を突きだして、抱き上げたことを表して見せる



あとあと大変、と言ったのはこのことを見越してだったようだ



「さっき、どこにいたの?」

見透かされていたことが恥ずかしく、話題を変えた


「靴ひもがほどけたから、結び直してた」


ずっと上ばかり見ていて気付かなかった


「どうせ、上ばっか見てて気付かなかったんだろ?こっちは見失わないように、ずっと見ながら靴ひも直してたのに」

またしても見透かされ、返す言葉もない




少し沈黙が流れ、目にかかりそうな前髪をタクがかき分けながら、つぶやくように言った


「久しぶりに『たっくん』て呼ばれたな……」

そう言い終わると同時に、少し離れた場所で花火が上がる



「こんな所からでごめん」

木が影になり、花火の円が欠けて見える


体を横に向け、膝枕をされながら

「ううん、綺麗に見えるよ」

と返して花火からタクへと顔を向けた


すると、花火を見ていたタクが一瞬だけこちらを見て、また花火へ顔を戻す


同じように花火に向き直ると、花火が打ち上がると同時に耳元で言われた

「浴衣、似合ってるよ」



耳を押さえてタクを見る


何事も無かったように花火を見ていたが、黒い色素ばかりの世界に、朱い色を付ける花火の光が、タクの顔にも赤みを加えた

















はい、終了~!



すいません、ちゃんと花火大会デートになってないorz




本当は人がいっぱいで、はぐれないように手つなぎデートの予定でしたが


仲良しさんのところで膝枕という素敵設定を貰ってきたので、どうしてもそれを入れたくてね(*´艸`)


無理矢理入れた感は否めませんが……




ちゃんとした花火大会デートの方が良かったかな?


期待していた方がいらっしゃいましたら、申し訳ない|壁|`)




タクにお姫さま抱っこされて移動したってのは伝わったかな?


でもさ、このタク、寺島くんが従兄弟だったら、てので妄想して書いてるけど


寺島くん、お姫さま抱っこできるのかな?


下半身弱いのにwww




なんか、読み手の方の心情を大事にしたいので


主人公の心情をあまり書いていないのですが……


話の内容が薄っぺらくない?




本当はもっと心情的な文があったんだけど、削って削ってこんな感じに……




今回はあまり萌えられないだろうなぁ(´`)


また感想などを聞かせていただけたら嬉しいです