【ストーカーとパーソナリティ障害】

 

「大手商社の部長B男は、偶然を装い待ち伏せしていた部下のOL、A子と共に食事をし、そのまま誘われたバーで泥酔状態になり関係を持ち込まれ、その後様々なストーカー行為を受ける。妻子を捨てる気などさらさらないB男に、想像妊娠を盾に執拗に関係維持を迫るA子に脅かされ、B男の心は次第に衰弱していく。」

「ねえ、私が今バスタブで手首を切って病院に運ばれたら、おなかの赤ちゃんがあなたの子だってバレちゃうね。困るでしょ?だったら今すぐ私の部屋に来て。初めてのつわりで苦しいの…」

 どこまでも執拗に獲物(ターゲット)を追い詰める。時には、「眠れないの、今から薬をたくさん飲んで永遠に眠ろうと思うの」「今、あなたのマンションの屋上にいるの。柵を越えて楽になろうかな…」と自殺を武器に相手の心を自分に向けさせ、自身の心の「淋しさ」を埋めようとする。

 

 上智大学の福島章教授は、著書「ストーカーの心理学」の中で、ストーカーをパーソナリティ障害から以下のように5分類しています。

①    精神病系  ② パラノイド系  ③ ナルシスト系  ④ ボーダーライン系  ⑤ サイコパス系

 精神病系ストーカーは根底に「精神病(分裂病)症状(主に妄想)」があり、精神科医療につながっている場合が多いですが、その恋愛妄想という病理ゆえ、想像を絶する振る舞い・行動をするという特徴があります。

 パラノイド系(妄想系)は、昔ながらの「ストーカー」と言われる典型的なもので、すべてが妄想ではなく、付き合っていた事実があり、その後、別れ話や冷たくなったなどから「私たちは愛し合っていて、私はこんなにもあなたを大切に思うのに、なぜ、別れなければいけないの?」というように主観的な恋愛観を達成しようと試みるタイプです。

 ナルシスト系(自己愛性パーソナリティ障害)は、自己愛の強さゆえに恋愛を主観的に判断しやすいという特徴があります。人は、「自己愛」⇒「母親との二者愛」⇒「他者愛」へと成長しますが、自己愛性の特徴は、母子一体から成長できないため(マザコン男子、姉妹親子など)、他者との関係をうまく築けず、対人関係で転職を繰り返したり、引きこもってしまったりするケースです。恋愛においても、母親との密着した関係の再現を求めるため、常に「誉めてくれる」「いつも一緒にいてくれる」ことを要求しますから、自分の意に沿わない行動や自分のプライドを傷つける行為に対して、ストーカー的に(執拗に)なるタイプです。

 ボーダーライン系(境界性パーソナリティ障害)が、最も社会的逸脱行動をとる場合が多い危険なタイプです。境界性パーソナリティ障害(境界例)の病理の根底にあるのは「見捨てられ不安」ですから、対人関係のバランスをとることが難しく、白か黒、0か100と両極端であり、べたべた甘えてきたかと思えば突然攻撃的になります。相手の愛情を手に入れるためには手段を選ばず、犯罪行為(手に入れられなければ殺してしまうなど)にまで及ぶほど、自身の感情の制御はできません。

 サイコパス系(反社会的パーソナリティ障害)は、思考の特徴として反社会的思考が強く、恋愛観も異常性が強く、凶悪犯罪に及ぶことも多いタイプです。幼少期からの生育過程で、何らかの問題を抱えており、連続幼女殺人事件などが顕著な例です。

 

 対人関係の構築スキルの欠如、または危うさが恋愛関係に及ぶとストーカーを生みます。「恋愛」は二者間相互の「共感性」で成り立つものですが、生育過程において親離れがうまく進まず一人の大人になり切れない未成熟な若者たちは、常に満たされない人間関係の中で「淋しさ・孤立感・疎外感」を抱え、「恋愛」にすべてのエネルギーを自己中心的に注ぎ込むのです。

 

 最近、若者の恋人同士では、スマホのGPS位置情報サービスをお互いONし合い、互いが相手の位置情報を常に確認することが「普通」になっている場合が多いと聞きます。夫婦間でも見られるようです。「何時に帰宅するのか?」「いつも通りに出社できているか?」「待ち合わせに間に合うか?」「今どこで何をしているのか?」…

 子どもの安全を考えて、子どもの行動を追う親が増えていることは今の世の中では、まあ、ある程度は納得はできます。ただ、恋人同士で、または夫婦間でお互いの行動を知る、覗く、監視する、束縛する…は有りなのでしょうか?ストーカーに追われている感覚を抱いてしまう私は、やはり「昭和時代」の人間だからでしょうか。

 

 引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、万全の感染対策を最大限に取りながら、少人数の従来の形でのセミナーと、リモートでのWebカウンセリングや大好評の「自分探し講座」などのZOOMセミナー、対面セミナーを複数ご用意してお待ちしております。HPなどチェックしてぜひ、弊社LINEに「お友達登録」してご利用してみてください。皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。 それではまた。  (中里文子)  https://agc-office.com/