久々に都会に出ようと思ったら彼氏からの電話
『今日は暇やな?ばぁさんん社会保険事務所へ送ってくれ』
『えっ!?う、うん…』
『うんという返事じゃわからん。「はい」か「いいえ」で答えんか!』
『わかった』←はい、と答えない女
「うん」と返事してる時は迷いながらでも頭で予定を調整してる時なんだけどなぁ
なので、即答すると、もちろん「いいえ」になる。それでいいのか??
などと思いつつ、ばぁさんを社会保険事務所に連れていく事を引き受けた。
うううっ、都会よさらば!
さて、私と彼氏にとって、ばぁさんは全くの赤の他人である。
たまたま彼氏の事務所のご近所さんという仲。
ばぁさんは人のよいおっとりし過ぎてる酒好きの老女。
うちの彼氏に
『生活できんのに、酒飲むな!』
って説教されても
『ばぁさん、もう少ししたら福祉が降りるから酒我慢せーや』
って、なだめられても
隠れてを飲んでるちゃっかり屋さん
昔は大金持ちだったらしく、ヤクザに多額の金を貸した証文の束を持って、ひょっこり彼氏の事務所を訪れたのが世話するきっかけ。
『これ、回収できますかねぇ?』
『無理やろ』
『やっぱり』
山のよーな証文を抱えて笑ってるばぁさん。
『豪傑なばぁさんや』
とうとう生活も危うくなって彼氏が見兼ねて福祉の手続きをとってあげた。
彼氏が暇な日は車に乗せて買い物に付き合ったり、福祉事務所の手続きに送ってあげたりしている。
なんか彼氏、自分が幼い頃に極貧だったから、生活できない年寄りや母子家庭の人をみかけたら福祉の手続きに熱心に動く。
先日、彼氏が病院に行ってた時に福祉事務所から呼び出しがあったばあさんは、腰が悪いのでヨチヨチ歩きながら坂道を片道2時間30分かけて福祉事務所に行ったそうな。
『途中に図書館も見つけてラッキー!本が読み放題!』
気持ちだけはパワフルばばあである
しかし見ている周りの者は片道2時間30分と聞いてはほっとけないので、私が送る事にした。
『忘れもの無いですか?大丈夫ですね?』
『大丈夫!』
ほんとかなぁ~全て調べて私が持っておきたいなぁ~
いやいや、赤の他人の個人情報やから大きなお世話やな。あかんあかん、やめとこ。
……って判断したのが間違いだった。
まず福祉をおろす為に安いボロ文化住宅を彼氏が探し出して、そこに引越したばぁさん。
電話を止めたので、福祉から引越し代金もでたらか電話を引く事にした。
NTTへ電話したら
『こちらの地図で探したらその住所は地図に載ってません』
『ひょえーっ』
どうも余りにも古い文化住宅だったので、地図と不動産屋の表記とズレがあったらしく、正確な電話回線を繋ぐには不動産屋に確認しなくてはいけない。
『ばぁさん、不動産屋って今日は休みよー』
『あら』
あら、じゃねーっ!!
明日、NTTの方から不動産屋に電話をして家の場所を確認してもらう約束をして工事の日を決める事になった。
場所を確認して実際の工事の日を決めるのに、どこへ連絡したらいいかとNTTの担当者
『私はねぇ!電話がないから電話をひいて欲しいと頼んでるんです!』
ばぁさん……ごもっともなんですが……
『……ばぁさん、私の携帯番号に連絡入れるようにNTTに言って工事に来る日はいつでもいいよね?私が適当にNTTと日にちを決めるから。明日の夕方ばぁさん家に知らせに行くし』
『すまないねぇ~』
という事で、明日の夕方もばぁさん家に行く事になった私
社会保険事務所では
『振込み手続きして欲しい~』
『通帳のコピーが必要です』
『あ』
あ?
『通帳お持ちならこっちでコピーしますよ』
『忘れた』
……ばぁさん……
『コピーを取りに帰ろう、ばぁさん』
『すまないねぇ』
『はいはい』
もしばぁさんが歩いて来てたら、往復5時間……ほんと無駄骨だ。
車で15分くらいの距離を行ったり来たり、電話して他の手続きもしたりして、私のお昼の3時間は潰れてしまいました~。
はぁ……お疲れ~。
まぁ、いいや。ばぁさんの往復5時間に比べたら、車なんだもんね
ばぁさん、来月も車で送ってあげるよ