3 勘違い野郎 | ColofulDream

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入口を出て横に俺を呼び出した張本人は顔を真っ赤にして待っていた。

「……で?」

そんな野郎に俺は冷たく声をかける。
こんなのを女子が見てカッコいいとか思ってくれないかな……なんて下心を持って。

「いや、用っていうか……とりあえず……着いて来てくれないかな?」
「分かった……」

小さくため息を吐いて俺は先行く“男”を追いかける。



「えっと……ここまで来たら分かっちゃったかもしんないけど……。
俺川岡さんのこと好きなんだ笑った顔がふわふわしててかわいいところとか、時々ボーイッシュなところとか。俺のこと全然知らないとは思うけど、俺のこと知ってもらいたし川岡さんのことももっと知りたい。
大切にするから付き合って欲しいんだ」

顔を真っ赤にさせながらそう言った目の前の男は世に言うイケメンで、そこらへんの女子なら即OKを出すかもしれないが、残念ながら相手は俺だ。

高校入学から早2年

俺への告白は14回…いや、これで15回目だ。

相手は全員


何か企みでもあるのかなって思うくらいに男ばかり。
全員そっちの気があるんじゃなくて完璧に俺を女子と勘違いして告白してくる。
それで、このセリフを言うのも高校入学してから15回目。

「あのさ、俺……男だから。ごめんだけど、付き合えない。」

「はっ!?マジで言ってんの!?」

心底驚いたらしく相手は切れ長の目(羨ましい)を最大限に見開いた。
次に返ってくるのもお決まりのパターン。

「え……俺……男……好きになってた……!?」
「そう、悪いけどさ俺男なの。制服のせいで紛らわしいよなゴメンね?」
「いや、俺が勘違いしてたのが悪いし……こっちこそゴメンな」

気まずい雰囲気になるのもこれで15回目。

まあ当たり前か。
女子だと思って告白したら実は男子でしたー……だなんて信じたくないよな。

俺は相当ショックを受けてるらしい男子に一言謝ってから教室に戻った。


「で?今回はなんて言ったんだよ?」
「わっ!?」

びっくりしたー……。

教室に入るなり目の前に立ちはだかった鈴汰のせいで暴れた心臓を沈めようと深呼吸してから答える。

「いつもと同じこと言うしかないでしょ」
「お前な…俺の受け売りでやんじゃねーよ。次やったら使用料取んぞ」
「いいじゃんか! どーせ鈴汰は使うことねーんだし」

今となればお決まりの断り文句も入学したてで初めて告白された時にどう断るべきか頭を抱えていたら鈴汰が提案してくれた。
コイツの場合、男になんて使わない。
カッコイイってずるい…。
真っ暗闇を切り取ってきたような鈴汰の髪と瞳はすごくカッコいい。

「神様なんか大っ嫌いだ」
「わしもお前なんか大っ嫌いじゃ」
「鈴汰に言ってねーだろ!!俺神様に言ったんだからなっ!!」
「おーおー、ちんちくりんがモノを言うなんて生意気じゃのー」
「ムカつく!!」

頭を抑えられて上を向くことができない俺はせめてもの抵抗に目の前の奴の脛を思いっきり蹴ってやった。

「っぅ!!!」

悶絶する鈴汰を避けて俺は机に座った。鈴汰の机に。

「あっ、携帯だ……。鈴汰のかな?だとしたら……」

机の前に置いてある携帯をいじって探していた名前宛にメールを作って……

「そーしんっ」

これを見たときの鈴汰の顔が楽しみで仕方がねーな~
怪しく笑う俺を頭大丈夫かな?とでも言いたげに藤堂が見ている。

「……あの……見てないから」
「俺、正常だからねっ!?」

親指立てて藤堂に体を向けるとものすごい勢いで目を逸らされてなんかのフォローを入れられた。
そんなに今の俺変だったかな……。
そんなことを考えているとなにやら後ろから物騒な雰囲気の鈴汰が俺の頭にポンと手を乗せ、逃がさんとばかりに力を込めてきた。

「てめぇ……人様の携帯使って何した?言ってみ?今なら1ヶ月俺に隷従で許してやっから」
「いででででっ!!手!!手!!」

ミシミシと頭蓋骨が悲鳴を上げる。
痛みで顔を歪めていると、何故かフラッシュが光った。

「痛いいいぃぃ!!泣いちゃうって!!俺泣いちゃうよ!!」
「おー、泣けや。泣いたら窓から突き落とすからな」
「なんだよ!!鈴汰彼女出来てから言うことが酷くなっとぅわああぁぁ!!」

さっきよりも込められた力が痛すぎて本当に涙が出てきた。
それでもなんとか身を捩って逃げ出した俺は体制を整えながら鈴汰をきつく睨みつける。

フーっ!!近づくな!!もう鈴汰の傍になんか近寄らないもんね!
……ってあれ?

なんか、鈴汰が固まってる。

「りん……た……?鈴汰ー?」
「あ……あーー……萎えた。お前殴る気失せた。だから……その顔、止めろ」
「へ?」

鈴汰が何を言ってるのか分からない。
疑問符を浮かべる俺に呆れたのか、鈴汰は俺の頬を伝う涙を拭って、女が誘ってるようにしか見えねーからって言った。

「マジで?」
「……周り見てみろ」

鈴汰に促され周りを見てみると……
顔を真っ赤にした女子や、目を何故かぎらつかせている男子が俺の周りを囲んでいる。
嫌な汗が背筋を伝う。

「俺……何してた?」
「……誘ってた」
「いやいやいやいや‼︎誘ってねーよ⁉︎」

「周りはそうは思わねぇってことだよ」
「だって俺男だぞ!」
「じゃあ、ソイツらの顔、見てみ?俺が正しいって分かるからよ」

そう言われて周りの奴らにおそるおそるもう一度視線を向けてみると……ーー