1 俺の夢 | ColofulDream

ColofulDream

色鮮やかな夢を楽しんでもらえるように日々更新中

NL/オリジナル


○○○



俺は毎晩夢を見る。

朝起きたら、

馬鹿みたいにでかい目が切れ長の大人の男みたいな目になってるんじゃないかって、
149センチなんてちっちゃい身体が170センチまで伸びてるんじゃないかって、
周りの女子より、ちょっぴりだけ低い声がもっと低くなってるんじゃないかって、

でも、鏡を覗くとそこにはいつもの自分が待っていて、勝手にショックを受ける俺がいる。

「もー…ヤダっ!!」

「ヤダじゃねえよ。朝からうるさいんだよ夏希(ナツキ)は」

「兄ちゃん…おはよう」

「ん…はよ」

俺にどけ、とジェスチャーするから体をどけたのに更に押された体は簡単に押しのけられた。

「なー兄ちゃん」

「…んだよ」

「男らしくなるにはどうしたらいいかなぁ?」

「知らねー」

顔を洗ってる兄ちゃんの後ろ姿は細身なのに、がっしりとしていて
髪型も俺ほどじゃないけどふわふわした髪にゆるーくパーマをあてていてオシャレだ。
盗み見ていると、顔を洗い終わった兄ちゃんと鏡越しに目があった。

「何?そんなに見られたら困んだけど?」

「別に……そんな見てないもん」

そっぽを向くと兄ちゃんはため息を吐いて俺に近寄ってきた。
相変わらず兄ちゃんはカッコいい。

思わず見とれていると鏡越しに目が合った兄ちゃんが怠そうに一言。


「その語尾に”もん”って付けんのも女に間違われる原因じゃね?」

「あ…」

そう言われると、確かにそうかもしれない。
クラスの男子は”もん”なんてつけてない。

「俺、気をつけてみる!!」

「おーおー、あがいてみろー」

それだけ言って兄ちゃんは洗面所からリビングに入っていった。
それを見届けてから俺は妹が起きてくる前に身支度を済ませようともう一度、鏡に向き直った。

「…………」

気にしないようにはしていても、やっぱり気になる自分の顔……。
鏡に映る自分の顔はいつもどこからどう見ても“女”。
何もしてないのに、ニキビのできたことすら無い白めの肌。
走った後というわけでもないのに、いつもほんのりと赤く色づいてる頬。
そこら辺の女子よりも大きめのたれ目を飾る長めのまつげ。
どれをとっても俺のコンプレックスでしかない。


そんな俺はつい、2,3日前にもスカウトされたばかりだ。

カウトといっても“女向けのファッション誌”に、だ。
男だから、と言って断っても

『分かりきった嘘をつかないでくださいよ』の一点張りで、

渋々自分の胸元を触らせてやっと納得されたぐらい俺は容姿が女子にしか見えないらしい。
相手が顔を真っ青にさせて必死で謝ってくるのを見ることに慣れた俺は、周りの男が舌打ちして俺の傍から離れていくのをぼんやりと眺めていた。