警察の方が2人みえました。


一人は私に、もう一人はオレサマに事情を聴きました。


・何を飲みましたか?
・いつ頃発見しましたか?
・何が原因ですか?


そんなことを聞かれたと思います。


まぁ大まかにこの内容をこの先何十回も繰り返すことになるのですが、
とにかく救急隊の方にも搬送された病院でも聞かれました。


その日に帰って来られるだろうと
安易に考えていた私は、彼女の靴と、お気に入りの人形を一つ連れて病院へ。


事情説明があって待たされて
事情聴取があって待たされて


21時頃やっと現状を説明してくれることに。


飲んだ薬は
・睡眠改善薬を約20錠
・バファリンを約40~50錠
・酔い止めの薬?錠
・???な薬多分30錠以上(多分これも鎮痛剤だったようです)


詳しくは本人しか分かりませんが、その場にあったゴミから察するには
それだけの薬を飲んだようです。


胃洗浄はすでに時間が経過しすぎていて効果がないこと。
一番問題な薬はバファリンだったことの説明を受けました。


アセトアミノフェンは肝機能を低下させ、
カフェインは多量摂取すると脈と熱を上げる。


脈拍が早いこと。
尿酸値が高いこと。
微熱があること。
あとは飲んだものの全容が分からないため
急変の可能性があることを理由にその夜はICUに入れることが決まりました。


ICUへ搬送するストレッチャーで対面した彼女は
やはりぼんやりしていて、話しかけてもいいですよと言われたが
その時はかける言葉がみつかりませんでした。


だって


なんて言葉をかけたらいいんでしょうか?


死にたいとまで思った理由が分からないのに
叱りたいけど、叱ることもできません。


そして入院手続きの書類に記入しながらまた待って。
次に呼ばれた時には面談室に中学の先生がいらっしゃっていました。


校長・担任・副担任の先生。


心配された・・・んだと思います。
彼女と学校を。


理由はと聞かれたけど分かる本当の理由が私に分かる訳がありません。



虐めがあったことは知っていました。
彼女が自分の主張をできない性格だって言うのも知っていました。



けれど、それ以上は彼女の会話の断片でしか分かることもなく
やっぱり理由は分からない。

伝えられる限りをお伝えして、途中面会ができると呼ばれた私は
彼女の元へと向かいました。



何を言おうか。



まだ決まっていませんでした。




□□□




ICUの部屋に一人彼女はいて、
私が入っていくと視線をこちらに向けました。


いくぶんかしっかりとした眼差し。
その目は私を捉えて安心したような色を浮かべたように見えました。


「ごめんね。帰るのが遅くなってごめん」


それが私が最初に彼女に言った言葉だったと思います。

いつも待たせてばかりなのです。
保育園のときも
学童の時も
そして今も・・・・

私の帰りは遅くって、彼女はいつも待っているのです。


そして今回も仕事を優先させてすぐには帰宅しなかった。
オレサマも義母も家にいたという安心感はあったけれど
それでも駆けつけるべきだったんだと思います。

けれどそれをしなかったから
発見が遅くなり彼女はこんな場所にいる。


「みんな心配してるよ。あのさ、帰ったらさ
 いっぱい話を聞くから2人だけでどこかに美味しいものでも食べに行こう。
 だから考えておいて。どこに行くかさ・・・・」


2人きりで話す時間はあまりありません。
チビたまの方が自己主張が強いので、話し始めたら彼女は
まぁいいかと引いてしまうことが多いし互いに忙しくて話すことも
最近では少なかった。


昨年の誕生日にオレサマがスマホ(電話機能なし)をあげてから
よけいにそうなったような気がします。


LINEやネットゲームばかり。


ずっとスマホを握って画面の向こう側の人達と会話をしていました。



「何か持ってきてほしいものある?」


そう聞くと、「ピクルス持ってきて」と答えました。


ピクルスは彼女のお気に入りのカエルのぬいぐるみです。
それは私が救急車に乗る時に連れてきたあの子。
けど、慌ててたからICUい入るときに置いてきてしまった。


「ごめんね。持ってきたんだけど今ないから、
 明日また連れてくるね」


うん・・・・


小さく答えた彼女はそれ以上何も言いませんでした。



「生きててくれてよかった」



ホッとした私は、その言葉とともに涙腺が緩む。
あとはぐちゃぐちゃになった顔で「また明日来るから」と言い置いて
部屋を後にしました。



生きててくれてよかった



本当に心から思いました。