帰宅してから、取材を元に企画に起こしてみる。

「モラハラ不倫夫に傷つけられたサレ妻がひょんなとこから女性用風俗を利用し、
セラピストに癒やされることで尊厳と自信を取り戻し、浮気の証拠を集めて離婚に踏み切るサレ妻リベンジモノ」というストーリーラインに決めた。

『サレ妻』『不倫モノ』は今のトレンドだ。
女風ドラマが放送されている今ならイケるかもしれない、という確信があった。

ちなみに「ひょんなところから女風を利用する」という部分については主人公が誕生日に友人からラブホ女子会に誘われ、

ホテルに先入りすると友達ではなく、男性が現れる。

それが女性用風俗のセラピストで、友人からのプレゼントだった、というオチだ。
これは以前に友達と女風の話になった時に聞いた友達の体験談だ。

企画概要を詰めて、3人のセラピストキャラを考えていく。

まず一人目は主人公と最初に出会うヒーローポジションのセラピスト。
店のNo.1。モデルは特に決めず、少女漫画に出てくるような正統派のイケメンにすることにした。

現役の美大学生。親が大手会社の社長で家を将来は家を継ぐように言われていたが、画家になりたいという夢を捨てきれず、

親に反発して美大に通うことに決めたので、学費を稼ぐためにセラピストをやっているという設定にした。

二人目は元セラピの敏腕内勤。お兄さん的存在でヒーローセラピの良き相談相手になってくれる存在。

モデルはモネくんである。

3人目は売れない新人セラピスト。
ヒーローのNo.1セラピストと対比させて、売れない葛藤や成長を描きたいと思ったからだ。

過去の利用歴から考えても、私はベテランや人気セラピストしか入ったことがなかった。
3人目のキャラを作るためには新人セラピストに入って取材した方がいいかもしれない。

そう考えて、モネくんに進められたモニターをやってみることにした。
モネくんが所属する店ではモニター募集はやっていなかったので、他店舗に応募する。

さっそく返事が帰ってきて、モニターの日程が決まった。

モニターはデビュー前の新人セラピストの施設を無料で受けることが出来る。(ただし、ホテル代はお客負担)
コースは90分。無料で受ける代わりにアンケートに答え、その評価次第でセラピストは晴れてデビューとなるのだ。

待ち合わせからホテル案内までも評価の対象となるため、ホテル街の近くの指定場所での待ち合わせになった。

ちなみにモニターはセラピストの年齢も外見も一切知らされない。
指名するのとは違って誰が来るのかわからないので実質、無料ガチャである。

書類審査や面接で受かっている人が来るので、変な人が来ることはないだろうが、
待っている間は不安で仕方なかった。

待ち合わせ時間になると、やたら大きなリュックを背負った男性に声を掛けられる。

「ゆうさんですか?」