この人って何者なの?


「じゃあ、そろそろレストランに移動しよっか?車持ってくるから、表で待ってて!」

「うん」


席を立ち、店の外へ。


「さむっ!」

「ホントさむいね〜!じゃ、ここで待っててね」

「あ、うん」


私は店の前にあるベンチに座った。


はぁ( ´Д`)=3

なんかスタバだけでめっちゃ疲れた気がするわ。

さっきぶつけたとこ痛いなぁ。

ジンジンする。。。


冬馬くんって、何歳くらいかな?

30は越えてると思うんだけど、、、


にしても、モデル並みのお顔立ちとあのスタイリング!あんな人みたことないわ。

雰囲気も明るくてノリ良さそうなのに、大人の余裕みたいなのあって、めっちゃ優しい。

しかも社長って、、、


本気でスパダリ過ぎんか?


偶然とはいえ、贅沢がすぎる。


でもでも……

せっかく張り切っておしゃれしたんやし、お金払って来てもらってるんやから、落ち着いて楽しもう!

いいやん!スパダリ!最高!!

うん!よし!!


あ!

そういえば浮かれ過ぎて忘れてたけど、飲み物代払ってないや。

たしか、デートで掛かる実費はこっち負担ってメールに書いてあったよね?

ま、あとで聞いてみよう!



10分後、冬馬くんがフェラーリと共に戻ってきた。

私の目の前に停車したので、乗り込もうとベンチから立ち上がったところで、冬馬くんが手に持った何かをポケットにつっこみ、急いで車から降りて駆け寄ってきた。


ん?どしたんだろ?


「お待たせ〜!美咲ちゃん。そういえば、頭打ったとこ大丈夫?たんこぶ出来てない?」

「あ、うん。まだ少しジンジンするけど、たぶん大丈夫」

「マジで?派手な音したもんね。ちょっと俺に見せて!」

そう言って、私を自分の胸元へグッと引き寄せ、私の頭上から後頭部の髪をかき分けようとする。


私は思わず「あっ!」と声を上げ、私の頭に触れている彼の両手を掴んだ。


「ん?どした?痛いところに当たった?それとも髪の毛触られるの嫌だった?」

と首を傾けながら私を覗き込む。


やっぱりこの人、色々と距離感がおかしい。

いくらレンタル彼氏って言っても、今日初対面だよ?

なんでこんな普通に恥ずかしげもなくこんなこと出来るん?


「えっと……嫌じゃないけど、みんな見てるし、恥ずかしいです……」


彼の手をとっさに握ってしまった事と私の頭に彼の指先が触れている事を自覚し、自分でもハッキリ分かるぐらい顔が真っ赤になっている。

本当に恥ずかしくて顔が上げられない。


「あ、ああ、ごめん!心配だったから」

「え?」

私はちょっと驚いて彼を見上げた。


「さっき美咲ちゃんホントに痛そうだったし、たんこぶとかキズになってないか心配で。俺に触られるのが嫌だったら、自分で触ってみて」


彼は私の頭に触れていた手をそっと離した。


私は痛みのある後頭部を触ってみる。

「えっと傷にはなってないと思います。でも触ると痛いし、やっぱちょっと腫れてるかも」


彼は凄く申し訳無さそうな表情になった。


「ごめんね!俺のせいだね。美咲ちゃんの反応が可愛いから、ついつい…。あのさ、アイスノン買ってきたんだ。これ、頭に当てて冷やして。本当ごめんね!」

そう言って、ポケットからタオルに包まれた小さな保冷剤を取り出し、美咲に渡した。


「あ、ありがとう!」


なんなん?

さっきポケットに突っ込んでたのって、これ?で、今の間に買ってきたの?!


「あ、それとこれ、ホッカイロも。保冷剤持ってると手が冷えるでしょ?」


は?

なにその細かい気遣い〜!


ヤバくない?

この人はいったい何者なの?

凄く女慣れしてるのは分かるのに、不快感を感じない。むしろめっちゃもてなされてるような……。

ただモテるだけのイケメンじゃない気がする。。。


「おっと!時間なくなっちゃうね。車乗ろっか?」

彼に誘導されながら、助手席に乗り込んだ。


車に乗り込む時のエスコートも彼は完璧だった。

車のドアを開けてくれるのはもちろんだけど、私を支えるように優しく手を添え、私が車のどこにもぶつからないように守る形で身を置き、頭も手で保護してくれた。

フェラーリは座席がとても低く、ロングタイトスカートを履いている私には乗りづらいはずなのに、彼のサポートでスムーズに乗り込めた。


彼も運転席に乗り込み、シートベルトを締める。

静かに車は発車した。


「ごめんね!座席が低いから乗りにくかったでしょ?」

「ううん。大丈夫。思ってたより座席が低くてビックリはしたけど、冬馬くんがサポートしてくれたから、凄く乗りやすかったよ。ありがとう!」


私の言葉に前を見つめる彼の横顔が嬉しそうに緩む。


「なら、良かった!つか、美咲ちゃんって可愛いだけじゃなくて、褒め上手だねぇ。嬉しいなぁ。ちゃんと俺のしたこと分かってくれてて。ありがとうね!」

そう言って、チラッと私を見た。


え?あ、そこ拾う?

「あの、別に褒めたわけじゃ……」

「え?違うの?」

「あ、いや。ただ、事実を言っただけで。ホントに乗りやすかったし。あ、でも、職業柄ってのはあるかも」

「ん?職業柄?どゆこと?仕事は何やってるのか、聞いて平気?」

「あ、うん。高齢者のデイサービスで介護福祉士やってて。職業柄、人の動きとか表情とか気になるし、ばあちゃん達にちょっとだけでも喜んで欲しいから、やってもらったこととか些細なことでも言葉にしたり、感謝するようにはしてるので」


あ、なんか自慢ぽくなっちゃったかなぁ。

そんなつもりじゃなかったけど、大丈夫かな……(^_^;)


「へぇ~!介護士さんなんだね、すごいじゃん!だからかぁ、、、」

何だか納得した様子で頷く彼。


なに?

何に納得したの?

だからかぁって何?


「あのさ、これ、新規のお客さんに言うの初めてなんだけどさ、、」

ちょっと真剣な面持ちで彼は語り始めた。

「俺、元ホストなんだよね」


〈レンタル彼氏編その6へ続く〉