私には10年お付き合いを続けている

13歳年下の彼氏がいます。

 

彼と出会う前…というか、知り合う前に

私は不思議な夢を見ました。

 

今回はその夢について書いていこうと思います。

 

 

彼と付き合うことになる少し前、

私は人生のどん底にいました。

金銭的な問題に加え、1年ほど付き合った彼氏との別れ。

またこの頃は両親との折り合いも悪く

友人にもこの悩むを打ち明けることができずに一人ふさぎ込む日々が続いていました。

 

 

そんなある日の夜に、私は夢をみました。

 

真っ暗な夜道を、ひたすら息を切らしながら走る私。

時折後ろを振り返り、また走る。

何者かが私を追いかけてくる。

理由はわからない。

ただどうしようもない恐怖に支配され、

”あれ”から逃れることだけを考えていた。

 

必死に逃げたが、追手はどんどん迫って来る。

体力は尽きかけ、視界も朦朧としてきた。

もう、ダメだーーー

そう思ったとき、突如目の前の曲がり角から

人影がみえた。

(ー男の人だ!)

 

助けを求めようとする前に、

状況を察した男性がさっと私に手を差し伸べる。

私は迷わずその手をとり、

男性は私をひっぱるように一緒に走って逃げた。

 

次第にトンネルを抜けたように

まわりが明るくなり、

後ろを振り返るとあの”何か”はもういなかった。

 

(よかった、振り切ったんだ…)

 

安堵した私。

そして私を心配するように顔を覗き込む男性。

まだ幼さを残すその顔は「もう大丈夫」

というように優しく微笑んだ。

 

そこで、私は目を覚ました。

 

(あの顔…)

 

 

重い体を起こし、ある場所へ出掛けるために

私は身支度を整えた。

 

自宅から徒歩15分ほどのその場所は

とあるアート関係のコミュニティスクールで、

私は1年前から油彩画を専攻していた。

 

「おはようございます」

「ああ、おはよう~」

 

講師やスクール生に声を掛けたあと、

制作を始めるために準備を始める。

 

そのとき、ある人物がふと視界に入った。

教室の片隅で、みんなに背を向けた形で

キャンバスに向かい筆を走らせている。

 

「……」

 

このクラスで一緒に制作するようになってから

もう1年が経つけど、彼とは数回挨拶をした程度で、まだ会話らしい会話をしたことがなかった。

 

というのも、彼は相当な口下手で

目を見て話すことができない、

いわゆるコミュ障だったのだ。

 

少し、考えて

私はゆっくりと彼に近づいて行き

彼の肩越しに声を掛けた。

 

「きれいなブルーだね。」

 

彼は大袈裟なくらい驚いて振り向く。

「あ…おはよう、ございます。」

 

彼のキャンバスには無数の青い蝶々が舞っていた。

はにかみながら、彼は

「あの、この子が…綺麗だったから」

そう言うと目の前に置いてあった透明な小物ケースを私に見せる。

覗き込んだ私は一瞬固まり、次の瞬間

「ヒッ!」

と後ろにのけ反った。

 

私の反応に傷ついたのか、彼は

「…ごめんなさい」

とすぐに小物入れを懐に隠す。

「ご、ごめん!ちょっとビックリして。

 それ…本物、だよね?」

しまった、と私は慌てて取り繕う。

 

透明なプラスチックケースの中には

青い蝶の標本が入っていた。

最初は、作り物だと思っていたんだけど…

 

「道端で、拾ったんです。

 死んじゃって、かわいそうだけど

 標本にしたら側に置いとけるなって思って…」

 

ボソボソと、聞き取れるか聞き取れないか

くらいの声量で呟く。

 

「そうなんだ。

 でもこの色…不思議な青色だね。」

 

パッと顔が明るくなり、

混色中のパレットを見せる。

 

「自分で作ったんです。

 色々試してみて…この青が一番綺麗だった。」

頷いて、私は

「うん、綺麗。

 君の青色って感じする。」

 

すると彼は嬉しそうに言った。

「僕、青が一番好きなんです。」

 

(あ…)

夢の中の、あの笑顔と同じだった。

いつも無表情な彼が見せた一面。

その変化が、何だかとても可愛らしく思えた。

 

 

それから、10年。

その彼は今、私の隣で今日もスマホを見ている。

 

彼の存在は認識してはいたけど

異性としての意識はもちろん、

年の差のこともありあくまでクラスメイト、

それ以上でもそれ以下でもない存在だった。

 

なのにどうしてあの日、

私の夢に出てきたんだろう。

…わからない。

 

ただ言えることは、

私たちの距離が近づいたきっかけが

あの日見た夢だったということ。

 

あの夢を見なければ、

私は彼に話しかけることもなかっただろう。

 

人間の感情は潜在意識でつながっているとはいうけれど、無意識のうちに私は彼に惹かれていたんだろうか?

それとも、彼の潜在意識が私を求めていたんだろうか。

 

それを確かめる術は無いけれど

人と人とのご縁がつながるというのは本当に不思議なこと。

 

私を守ってくれている存在が、

彼とのご縁を結んでくださったのかもしれない。

そう思えてならない、不思議な夢のお話でした。