宮尾登美子原作の映画。

『貧乏はいかん、貧乏はひとの心まで腐らせる

おまんら子供にもひもじい思いはさせんきにゃあ』

と、女房に低い声で言い捨てる緒形拳様いわがこれまた女街の役。





話は緒形拳ではなく、
緒形拳の本妻、十朱幸代様きわが軸になっている。

緒形拳 いわ
十朱幸代 きわ

名前がとにかく紛らわしい。

いわが
『支那に売られて薬の材料にされて死ぬかもしれない』
と言う訳で港で10円で買った娘を家の娘としてきわに育てさせた。



菊演じる石原真理子

女街の仕事を、いわは人助けのつもりでやってるが、
やめてほしい女房きわ様。

きわは
緒形拳の港で買った娘菊、
緒形拳いわの外の子あやこ、

を両方とも結局血が繋がっていないのに実の子のように育てる。

夫の不倫を知りながら、菊、あやこを育て可愛がる十朱様、美しくはかない。

子宮筋腫の退院後もまたさっそく、夫の浮気を目撃してしまうきわ、
なのに目があってもそのまま女と事務所へはいる夫いわ。






あの時代
貧しさから娘を売ったとか、
売られた娘は苦労して借金を返すとか、
芸ぎはうみたい子供も産めないとか、
旦那の浮気も、それを耐える女房も当たり前の社会通念、

当時の女性は苦労が耐えなかったことが
この映画を通して、知ってはいたけど遠い時代の話が、
この映画で想像から一つ越えた、現実に見た世界のように感じた。

印象的なのは

土佐一の芸子になった名取裕子が緒形拳に言い寄ろうとするシーン。

緒形拳の
『結局、金の切れ目が縁の切れ目か』  に、

名取裕子が
『そう言うおなごをこさえるががぁ、お父さんのお得意ですろぉ』

と、言い返す。

もともと、稼ぐ芸子になれと名取裕子を売ったのも緒形拳。芸子になるもならないも選べない運命。

見事に緒形拳の矛盾をついている。




夫に、実の息子に、
30年住んだ家を実質追い出されたきわが、
血の繋がらないあやこを決してはなそうとせず、
『あやこは来年は立派に女学校へあげる』
と言うのは勇ましい。

暗い小さい家で封筒作りの内職をするいわの家に来たきわが最後は綾子を取り上げてしまう。

こんな救いのない話、
なんで好きなのか考えたとき、

苦しい中でも信念では絶対折れない、
どんな環境でも精一杯生きようとする、
男に流されない

頑固だけど強い女性像が
心を打つんじゃないかと思う。

宮尾登美子さんの作品はもっと、
見ていかないといけないよ。