「 なんで、急に終わったの? 」

え? 終わった?

「 終わったんですか? 」

先生が、おどろいた顔になる。

「 えっ。知らなかったの? てっきり、知ってるのと思った。 」

「 いつからですか。 」

「 あんたがちゃんと登校しはじめたときくらいかな。 」

私がいじめを反対した時期……。

真由たち、やめたんだ……。

「 先生、ありがとうございました!

  私、分かった。教室、行くねっ!! 」

そう言って、椅子から立ち上がり、保健室を出ていく。

先生がふっと笑う。

「 先生には、敬語っていつも言ってんのに、まったく。 」


ガラッ。教室のドアを、勢いよく開ける。

みんなの視線が一気に美羽に向けられた。

「 みんな、おはよぉー。  」

先生が、美羽を睨む。

「 なんで遅刻したんです? 」

「 頭、痛くて。 」

わざと、ゴホゴホと、せきをする。

「 風邪かな。大丈夫なの? 」

「 はい……。今、保健室で休んできましたから。 」

「 そう。 」

キーンコーンカーンコーン―――。

丁度、チャイムが鳴った。

「 じゃあ、終わりにします。

  日向さんは、無理をしないように。以上。 」

先生は、さっさと教室を出て行ってしまった。


「 美羽。 」


凛とした綺麗な声。

「 あ、美子。 」

美子が微笑んでいた。私の、大好きな笑顔。

「 てか、美羽って、“日向さん”だったんだ。 」

失礼な!

私は、日向 美羽よ。

「 ひどいね。 」

「 嘘に決まってんじゃん。

  何年の付き合いだと思ってんの? 」

「 まあね。 」

笑いながら、暑苦しいマスクをはずす。

私って、もしかして女優むき?

「 その口、どうしたの? 」

いきなり、美子が覗きこんできた。

え、口?

「 何が? 」

「 今日は、すごい派手メイクじゃん。

  別に変……っていうか、変だけど。 」

今日はメイクなんてしていない。そんな時間、なかったし。

「 メイクなんてしてないし。 」

「 え? じゃあ、なに、それ。ケチャップ、ジャム? 」

「 意味分かんないから。 」

美子がため息をついて、手鏡を出してきた。

それを、美羽に渡す。

「 見てみ? 」

それを受け取り、カチャッと、鏡を開ける。

そして、それを自分の顔の前に持ってきた。


「 わっ! なに、これ!? 」


そこにうつっていたのは、口が真っ赤な女の子。

急いで、ティッシュでごしごしと拭いた。 

やだ……これ、口紅?

「 なんで? うち、口紅なんかつけてない! 」

「 いやいや。ついてるのは、事実だから。 」

もしかして。

ブレザーのポケットを探る。 

目当てのものを見つけると、それを取り出した。


「 うっそぉ……。 」


朝、リップだと思って塗ってきたものは、真っ赤な口紅だった。

まじで、最悪でしょ……。

「 ギャハハハハ! 美羽、ダサーイ。

  ってか、ウケるーっ。 」

美子……あんなに、クールだったのに……。

すると、急に美子が笑うのをやめた。

「 どうした? 」

「 真由が、睨んでる……。 」