村山先生の久しぶりの短編集です。
「龍神まつり」「ほおずき市」「白秋祭」「道祖神祭り」「蘇民祭」「相馬野馬追」を6つの祭を題材としたお話。
それぞれの欲望であったり情念であったり、人の心の中の色々な思いと、祭りの高揚感と官能が入り交じった、エロスの中にも時に切なさの残る作品となっていました。
この本を読んでいる間、表紙の装幀が黒い背景に浮かぶ炎だったせいか。
読んでいる間、ずっと姿を変える炎のイメージが頭に浮かんでいたのは私だけでしょうかね?
それぞれのイメージとして
「夜明け前」(龍神祭り)
祭りの頃、夢と現の狭間で顔の見えない男に抱かれ乱れるレタス農家の嫁。農家なではのしきたりというか業の過酷さ。
…… 祭りの夜に激しく燃える篝火、もしくは地獄の業火。
「Anniversary」(ほおずき市)
乳ガンを患った女性が、過去に戻るならいつ頃に戻りたいかを書いたメモを枕の下に入れるおまじないを思い出しつつ、ほおづき市で迷い違う世界へと飛ばされるファンタジー。
…… 七色に変化する幻想的なランプの炎。
「柔らかな迷路」(白秋祭)
離婚を切っ掛けに地元に戻った女性が友人と再会し、家庭の事などの話の中。夫だった人の事を思い返している時に、目の前の運河を遊覧する当人と再会し新たな魅力に気付かされる。
…… 種火? 松ぼっくいに火。
「水底の華」(道祖神祭り)
エリートの旦那の嫁いだはずが、旦那の病気がもとで人生が狂った女性の悲哀。
…… 埋み火、一瞬のきらめき。
「約束の神」(蘇民祭)
子供の頃にガキ大将に苛められていた少年と年上のヒーロー。大人になっても変わら永遠の約束と密かな想い。
…… 蒼く燃える炎。
「分かつまで」(相馬野馬追)
父親と禁断の関係を結ぶほど、ファザコンの女性が仕事でであった年上の記者と付き合い別れた数年後。
元恋人がガンを患っていることを知り、改めてのそ人の存在の大切さを自覚。
死が2人を分かつまで共にあろうとする。
…… 暖かく、優しく燃える暖炉の炎。
今回の6つの短編の中で、1番初めの「夜明け前」のインパクトの強さ。
村山先生作品では珍しい男同士の友情というか、秘めた愛を描いた「約束の神」。
穏やかに死が2人を分かつまで、これまでの日々とこれからを描いた「分かつまで」。
この3編がすごく印象的でした(^^)
最近のミルク・アンド・ハニー以降の年上の女性とダメ男の話も嫌いではないのですが。
たまには今回みたいな官能的なお話を書く、ブラックというか、グレーな村山先生もやはり好きですね(^^)
「夜明け前」や「約束の神」のような話を、短編でなく長編で読んでみたくなりました。
ちなみに、タイトルの『まつらひ』とは、非日常と日常を指す“ハレとケ”の概念を見いだした民俗学者の柳田國男(やなぎたくにお)が、「祭」の語源として提唱した「まつらふ」(祀〈まつ〉る)から連想した造語だそうです。
内容(「 BOOK」データベースより)
夏祭りが近づくたび、艶夢のなかで激しく乱れる舞桜子。どれだけ過去から逃れても、年の離れた男しか愛せない秋実。夫との夜がなくなって以来、熾火のような欲求を抱え続ける小夜子…。神々を祭らふ夜。男と女は、人の世の裂け目を踏みはずす―恋愛と官能の第一人者が多様な“性”を描き尽くす!六つの禁断の物語!
文藝春秋 (2019/1/31)
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