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活字大好き本のむし 綾乃の本のつぶやきブログ

本を読むのがとにかく大好きです。
そんな好きな本の感想などを字数にとらわれず、つぶやいていくブログです。

婦人解放運動家・伊藤野枝の生涯と、夫であり盟友・同志でもあった無政府主義のアナキスト大杉栄を軸に、交流のあった平塚らいてう、与謝野晶子、神近市子、伊藤源太郎などの視点を交えながら書かれた、村山先生初の評伝小説です。
 
 
 
関東大震災の混乱のさなか、憲兵に囚われたところから物語は過去に戻り、お転婆で負けず嫌いでも本を読む事と勉強が好きな野枝の子供の頃から、叔父の代準介に願い女学校でがむしゃらに勉学に励んだ少女時代。平塚らいてうらなどから影響を受け編集者として働いた青鞜社時代。
教師であった辻潤との結婚生活。
他の男の妻であり母でありながら、誰よりも愛した大杉との出会いで女であることを選び子供を捨て、それでも大杉との子供を愛し。時に激しく時に優しく、強さと弱さを抱えながら生き、「甘粕事件」の被害者となるまでの濃密な人生にただただ圧倒あれました。
型に嵌らない生き方、無政府主義を貫き何度も逮捕監禁事件される大杉を心配しつつ平然としてたり、人から借金しまくり踏み倒すとか、愛人と旅行に行って修羅場になったりと、今の世の中からは想像も出来ない(いや、一部現代に通じる部分もあるか(^^;; )ことばかりなんで。
 
それでも物語のラストで、長女の魔子(事件後眞子と改名されてますが、ここでは敢えて改名前のままで)と同朋の村木源太郎の会話を読みながら、野枝もたぶん大杉もだろうけど、もしかしたらいつの日にか階段を昇り絞首刑になることを覚悟していたかも知れない、けど関東大震災のどさくさに紛れ、ありもしない嫌疑と甘粕の思想弾圧主義を貫く為に惨殺されるとは思ってなかっただろうな。
さぞかし無念だっただろうなぁという思いと、野枝最期を描いた数ページから、自身の母親にこぼした「かかしゃん、あたしら畳の上では死ねんかも」という呟きが思い出され、この言葉が胸に突き刺さりましたね(T ^ T)
 
 
そんな野枝のこと学校の近代史でサラッと習う「甘粕事件」の被害だったことをこの本を読むまで恥ずかしながら知りませんでした。
自分たちの言葉で意志を言葉にしなくなった現代(自分も含めて)。
無政府主義者、アナキスト、右・左翼主義そんなこと関係なく、一人の女性でありながら自らの意思で逞しく生き、自分の言葉を発信し続けた生き方を真似することは出来ませんが、強く自立して生きた女性をもっと早く知りたかったなぁ~と思いました。
う~んでも今この時代だからこそと言うのもあるのかな?
 
 
この本ファンの間では「赤い鈍器」と言われるのですが。
656ページの大ボリュームもさることながら、この本を書くのに村山先生が読み込んだその知識と熱量が、自由奔放に行きながらも女性の地位向上と自身の思想を貫き、優しくも逞しく生きた一人の女性に血肉を与え、まるで大河ドラマを見ているような濃さ、その点も「赤い鈍器」と言われる所以なのではないでしょうか。
読了後しばらく言葉にならない思いで一杯になってしまってなかなか戻って来れませんでした( ˊᵕˋ ;)💦
 
 
是非とも色々な方に読んで欲しい1冊ですが、相当な体力と精神力が必要になる本ですと言いたいですね。
 
 
 

 

 集英社   (2020/9/25)

 発売日   2020/9/25

 単行本   656ページ

 ISBN-13 978-4087717228