【感想】 みをつくし料理帖特別巻 花だより / 高田郁先生 | 活字大好き本のむし 綾乃の本のつぶやきブログ

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そんな好きな本の感想などを字数にとらわれず、つぶやいていくブログです。

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シリーズ完結から4年、 待ちに待った「花だより」です。
高田先生の時間がかかるかもしれないけど、必ず澪たちのその後を書きますという言葉を信じずっと待っていました。°(°´∀`°)°。
澪と野江が大坂に戻ってから4年後。
つる家の旦那さん種市、小松原さま(どうも小野寺さまと呼びにくい(^^;;)と奥方の乙緒、野江、そして澪と源斎、それぞれのその後を描いた物語です。

「花だより」
つる家の旦那さん種市が澪からの便りが届かないこと心配し、お店の看板娘のりうさん、常連客の清右衛門先生と坂村堂さんの高齢者(現代だったら後期高齢者(^^;;)4人で、大坂を目指すはずが途中ぎっくり腰で断念。
澪へのお土産の「浅利の佃煮」を帰り道でみんなで食べる、なんとも旦那さんらしい、おっちょこちょいな所と早とちりのお話しでした。

「涼風あり」
小松原さま(小野寺さま何ですけどね、小松原さまで呼びたい(^^;; )と一風変わった能面のような奥方乙緒との結婚生活危機。
2人目の子供を懐妊した乙緒はひどいつわりと情緒不安定から、何も食べられなくなり唯一食べられそうな「岡大夫」(蕨餅のことでした)を、小松原さまに頼むことで夫の気持ちのを測ろうとした乙緒。
小松原さまが澪に抱いた気持ちとは違うかも知れませんが、それでも感情をあまり伝えない似たもの夫婦ならではの絆を、これから2人で少しづつ育んでいけるのではないかと思えるお話でした。
今後も「岡太夫」の出番があるかも知れませんが、この2人ならきっと乗り越えていけるのではないでしょうか?
短い間ながら姑の里律さまから、家族にも秘密だった「岡太夫」を授けられた深い絆が羨ましくも素敵です(^^)

この2編もすごくよかったのですが、やはり主役の澪と野江のお話が印象に残るものでした。

「秋燕」
生家の淡路屋を再建して4年。
親友の澪、使用人に囲まれ商いは順調に進んでいても、心の内に虚しさを抱え込む野絵が婿取りを迫られ、死んだ又次が掴めなかった幸せを、自分だけが手に入れて良いのか悩み、形だけの婿でいいから自分と夫婦になって欲しいと伝えた辰蔵に、それまで誰にも話したことのなかった吉原での事を語ったお話しです。
洪水で孤児となり騙されて、吉原という苦界に落とされ野江、絶望の淵で出会った又次が食べさせてくれたから汁と、又次の存在が生きる希望となり。
お互い男女の情ではなく、吉原と言う地獄で出会い、お互いを生きる理由とした事などを語っていきます。
始めは戸惑った辰蔵ですが全てを受け止め、又次が野江のために作ったから汁の作り方を澪に教わり、自ら作ったから汁と共に夫婦となって欲しいと告げるのですが、そんな彼に野江の方から自分と家族になって欲しいと告げ、その後夫婦となる凄く切ないお話ではありましたが、ずっと苦労してきた野江が幸せになれてよかったです(╥_╥)
又次のように命懸けで野江を守るのではなく、共に戦っていける辰蔵と家族になれたことを、きっと又次さんらしく笑いながら喜んでいるのでるでしょう(╥_╥)

「月の船を漕ぐ」
大坂に戻り北鍋屋町の長屋で料理屋「みをつくし」を営む澪ですが、巷では疫病コロリ(現代のコレラ)大流行と蔓延で、店を畳まなくてはいけない状況の頃。
夫である源斎も患者を救うために奔走し続け、過労で倒れてしまいます。
食べることも、医者として患者を診察する気力を無くしてしまった源済、そんな彼に澪は暫くの間夫だけの料理人であることを決意し、栄養のあるもの、少しでも体力を補うものを食べさせようとするのですが、源斉はほとんど手を付けず、2人は食べること、料理をすることが苦痛となり徐々に心がすれ違って行きます。
「食養生」の大切さを一番よく知る2人だけに、読んでいて切なかったですね(╥_╥)
そんな源斎のために、澪が姑のかず枝に習って作った江戸味噌。
その味噌を使って作ったみそ汁がもとで源斎は気力を取り戻し、後に料理番付にものることとなる「病知らず」の原点となりました。
「病知らず」が源済を思ってできたものと知り、このシリーズとは切り離せない「食は、人の天なり」「食養生」。
人を思って作る料理の大切さ、澪の暖かさと思いの深さが心に染みるお話でした。

このお話の中、夢で真っ暗闇の海で1人で船を漕いでいた源斎。
澪は新月だったので何も見えなかったのでしょうと言っていましたが、月明かりが照った時、1人ではなく同じ船の上に澪が乗っていると思って欲しい、そんな夫婦でいてくれたらなと思いました(^^)
結婚して何年も経つのにお互いを澪さん、先生と呼びあい、お互いを深く想いあう2人なら大丈夫かな(笑)

最後に、澪は両親と住んでいた家があった場所に新しく、料理屋「みをつくし」を開店。
源斉も医者に戻り、野江夫婦も幸せとなり、種市・清右衛門先生・坂村堂さんが「みをつくし」を訪ねてくる大団円で幕となりました。
つる家の旦那さん念願だった、お澪坊に会えてよかったですね(^^)


みをつくし料理帖特別巻 「花だより」を最後に、シリーズ完結となってしまいとても寂しいですが何年も待った甲斐があり、それぞれの4年後の幸せな(苦難もあったけど(^^;;)様子を読めて嬉しかったです。
 

 

内容(「BOOK」データベースより)

 

澪が大坂に戻ったのち、文政五年(一八二二年)春から翌年初午にかけての物語。店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋燕」。澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。シリーズ完結から四年、登場人物たちのその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ特別巻、満を持して登場です!



角川春樹事務所