1日1つ、ビールの話3☆

 

 日々の暮らしの中には、様々なシーンで何かを待つ時間がある。人と会う時、会議が始まる前、並んでコーヒーを買う時、レストランで、病院の検査時、人気テーマパークの人気アトラクションで・・・などなど。

 

 基本的に、人気店だから、というような行列で待つことは、ほぼしない私だが、好きな「待ち時間」がある。それは空港での時間。

 

 ここ数年、飛行機に乗る機会が増えた。なので、空港でフライト待ちを良くするのだけど、それは幸せなひととき。空港に一歩、足を踏み入れるだけでワクワクするのだ。

 

 何故って、そこにはいろんな人が行ったり来たりしてる。旅行、仕事、留学や研修に出かける人達。又はそこから帰ってくる人達・・・その雰囲気はなんとも言えない、いい感じ。

 そして、それをサポートする人達も大勢。パイロットや客室乗務員、空港スタッフ、レストランスタッフに、お土産販売スタッフ。そして、コンビ二バイトスタッフ、航空機やその他の乗り物・空港自体を管理する立場の方・・・てきぱきと働く方達を見るのは楽しい。


 水は常に流れていると濁らない、というけれど、空港も同じで、人や物、何かが常に動いていて、良いパワーが宿ってる・・・そんな風に感じるのだ。

 

 先日も、成田空港に2日連続で出むく、仕事の機会に恵まれた・・・それは、たまに受け持つ海外のVIP対応業務。

 

 お迎えしたのは、米国ジョージア州の某企業CEO。会社名とB氏の名前をグーグル検索すると、運良く写真付の情報にヒット。国際線の到着窓口で、迷わずお会いできた。そして、手配してあったハイヤータクシーにて、東京駅近くの5つ星ホテルまでお見送り。8年前に一度来日し、その時も東京駅付近に宿泊したそう。

「でね、仕事の合間に・・・どこだったかな?新幹線で原爆記念館がある所にも行ったんだ」
「広島かな・・・昨日、その都市の、原爆記念日だったんですよ」
「ああ、そうか。そうなんだね」

彼はしみじみした顔をした。

 

 CEOと聞くと、堅苦しい雰囲気を想像する方もいるかもしれない。が、会社役員などをはじめとする海外VIPの方は、飾らない気さくな方も多い。Mr.Bもまさにそう。私自身、ジョージア州はアトランタにステイしたこともあって、人気の寿司レストランやローカルクラフトビールの話で盛り上がり・・・あっという間に、ホテルに到着。夕方は取引先の方がロビーに迎えに来るのでよろしくと伝え、又明日会いましょう、とホテルを後にした。

 

 翌日も全てスムーズだった。会議も良かったし、和食も素晴らしかったよ、ありがとう、と握手をして、B氏はビジネスラウンジに消えていった。うーん、良かった。

 ・・・と思ったら、大事件が起きた。

 ニュースでも話題になったけれど、デルタ航空の本社にてメインコンピューターがダウン。その日15時半以降の全世界のデルタ便が遅れ、成田空港でも数機が欠航・・・その一機は、彼の乗る予定のフライトだった。

 

 メールで大丈夫か連絡。「機体から降りて対応待ち」と一回22時半頃に返信が来た。その次の返信は、真夜中の2時半・・・航空会社手配のホテルの部屋に、やっと入られた後だった。できるだけ早いフライトを段取りしてもらう手配を約束。そして数時間後、寝不足のまま私は別の仕事へ。そこで引き続き、合間に、電話したりメールしたり・・・

 

 周りの仕事仲間には「大変だね~!」と同情されたけど、本当に大変だったのはMr.B。帰国後の仕事の予定も詰まっていたろう、なのに、8時間以上の待ち時間の後、飛行機から降ろされ、更に2日後のフライトを代替えにされたら、たまったものではなかったろう。
 
  そう、楽しいはずの「フライト待ち」も、何かが起きると、冷や汗ものの時間に早変わり。思い返せば、私自身も色々あった。

 

 米国からの帰国時、30分遅延予告が1時間、2時間、3時間・・・どんどんと伸びた時には、暇をもてあまし、いつ帰れるのか不安に。
 ラオスの郊外で国内線に乗るはずが、もう今日は来ないから、明日同じ時間に来てください、と言われた時はビックリ仰天。
 一番きつかったのは、一昨年のリスボン、空港でのあの瞬間。
「フライト遅延してるので、乗り換え地のドバイで一泊してください」
一緒にいた何人かのお客様は、ドバイ観光が出来る!と喜ぶ。別のお客様は帰らないとまずい!と焦る。アテンド担当だった、私のストレスは限界寸前・・・

 

 でも、そんな時に文句を言ってもどうしようもない。気持ちを切り替え、機転を利かせ、最善の方法を取るしかない。そして大変な経験こそ、後に良い経験になり役立つ・・・実際、自分の場合もそうだった。
 

 考えてみれば、Mr.Bは私以上に、そういった状況も度々経験されているはず。それを踏まえて行動し、すばやく対応し、メールで仕事を進め、うまく仮眠を取りながら、時間を過ごしたに違いない。

 

 最終的には、一日早いフライトのご案内ができ、無事に乗り込まれ(ただしそれも2時間遅れで出発したが)無事に到着したMr.Bは「本当にありがとう!今、ハーツフィールド空港だよ」と関係者全員に即、メールをくれた・・・さすがだ。疲労困憊してると、連絡がどうも遅れがちな私、学ばなくては・・・

 

 そういえば。忘れてたけど、フライト遅延をうまく使えたこともあった。
 ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ空港にて。1時間半離陸が遅れたおかげで、地元クラフトビールであるSweetwater(スイートウォーター)を、バーでゆっくり味わった。当時、英語力も今より非常に低かったので、バーテンさんや隣の人達と話しながら、英単語のメモを取りながら飲んだっけ。

 

 考え方と工夫次第で、どんな時間も自分の物にできる。そして、それを後押ししてくれる設備や施設があれば、更に助かる。全ての空港のゲートのそばに、美味しいビールが飲めるカフェやバーがあれば・・・どんなフライト待ちの時であっても、助かる人が・・・特にこのエッセイを読んで下さってる人には、ありがたいこと・・・ですよね?

 

 もし、これを読んで頂いてる空港関係者&ビール関係者の方いらっしゃいましたら、美味しいビールの1ファンより・・・ぜひぜひ、そんな場のご検討をよろしくお願い致します!

 

<後書き>

 

ひさびさビアエッセイ。読んで頂いてるみなさま、ありがとうございます。実は、書きかけの「パート3」の候補がたくさん、たまってました。1つ前の「2」 http://ameblo.jp/ayanee/entry-12186607278.html が気に入ってて、その後に、何か書こうとしても、筆が止まり・・・でも、仕事中に大事件が起きてネタとなりました(笑・・・今だから笑えるけど)

 

なお、書いてるもの全般、ノンフィクションベースでちょいフィクション入れてます・・・例えば、Mr.BはAが頭文字で、企業でなくて研究所の方。アトランタでなくてサンフランシスコから来てて・・・って、この例えも別のことだったりして(笑)一応、個人情報保護のため♪

 

でも基本的には実話。あの日、デルタ乗る予定だった世界中の人は大変だったことでしょう。空港の方も、デルタの社員の皆さんも・・・今日はANAの荷物が後送り、なんてニュースも。今、関係者やスタッフさんは頑張っているんだろうなぁ。当たり前に乗っているけど、ほんとは飛べない人や物を運んでくれる飛行機ってすごい。それにまつわる仕事をする皆さんも、責任重大で、すごいと思います。

 

日本はまだまだ安全な国と言えるでしょう。空港は、そんな日本と国外を結ぶ境。海外はテロの危険も増えてきて心配、という方もいると思います・・・が、どこにいてもどんな時も、ベストをつくして動くしかないんですよね。もうすぐ明日が来るけど、明日は明日しかない。ベストを尽くして・・・今頑張ってる部屋の掃除を進めよう。私にもし、本当に明日しかないとしても、部屋を片付けたい今なので。時間を大切にして、頑張るぞ~。

 

では、おやすみなさい♪