こんばんは、こちらではオリジナル作品を載せています。
視覚障害と聴覚障害を持つ、「朦朧しゃ」の私(彩菜)が、書いたものなので誤字脱字があるかもしれません。
目を通しているときも読み終わった後も、何も考えなくて大丈夫です。なんなら読まなくても大丈夫。
それでは、私の世界へようこそ。

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虚無
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レモンの匂いを運んだ風が通り過ぎる
私の後ろ姿 どなたかがしばし見ていたようだ
周りのことは知らないふりで
さも戻ってくるつもりであるかのようにバックを置いて逃げ出して
怯えが走って背が震えた

当たり前のように皆が見ている風景を
長い前髪で遮っていた
あなたの言葉をうまく受け取れない
おっことしそうになってあたふたして
覚束ない昼下がり
空虚な部屋でそっけなく椅子になりすましている

音のない清廉な文字をいつまでも追っていく
柔らかな騒音からもやがて溶け出した
夢をみる夢を見てまだ夢見がちで
愁を携えてもあくまでも私であって
部屋の外で皿の割れる音がした
それさえもはや聞こえやしない

歩けば歩くほど港違う自分のこと
解るようになって許せなくて
あなたのことが好きで でも解らない
飲み込めずむせ返って明滅して
墓穴を掘る 間が抜ける
大人になれたら食えない苦しさも許せるかな

そのうちまたいつかって
去っていく時はあらゆるものを切り刻んでいく
変わらないものはなに一つとしてないのに
変わってほしくないものが恐ろしく増えてく
人への好意も恋心も
どこかにまだ また寄り添っていくのならどれだけいいか と

当たり前のはずと皆が見ていた風景が
いつしか砂に変わる時が来る
あなたが残した物語だけは
悪巧み振り翳して可笑しくて
消化されず後を引いて
未来も超えるその先も願いも持たず漂う