もしもし、聞こえますか、見えますか。
こちらは、視覚障害と聴覚障害を併せ持つ、「盲ろう者」の私(彩菜)の、お粗末な随筆もどき。
たぶん、なんの気づきも得られないと思うが、よければゆるりとどうぞ。


4月3日(水)
濃い緑茶を急須で淹れて、カップに注ぐのだが、なぜか、どこからともなく、一部のお茶がこぼれる。
寝巻きのズボンにも被害が頻発。
こいつは、一体どこから出てきてんだろうか、注ぎ口も角度も、これと言っておかしな点はないはずである。
とはいえ、お茶はうまい、アルフォートもうまい。
夜は深まる。

4月2日(火)

ぷっちんプリンのデッカいサイズを祖母から貰い受けた。
半ば強制的に[腹減っとるやろ、食べんか]と、目の前にどんと出される。
ご丁寧にスプーンが添えられ、ベリッと封を剥がれてしまえば、食べる以外に選択肢はない。
黙々と、すくってはパクリすくってはパクリと、人工甘味料を味わっているうちに、プリンの容器が桜の形になっていることに気がつく。
皿に逆さにしてぷっちんすれば、桜の輪郭を持った、飴色のソースと卵色のプリン部分が、うるーんうるーんとぷるるんちょとなるわけだろう。
でも、もう遅い。


4月1日(月)
嘘がつきたい、でもろくなことを思いつかない。
センスのない自分を慰めるために、ちょっといいとこのみたらし団子の箱を引き寄せる。
紙の箱で、蓋を取ると竹っぽい髪が現れる。
スーパーのみたらし団子とは違い、団子部分がタレを絡める前に炭火で炙られており、大変香ばしいのである。
竹串をつまんで台紙から、ベリベリと剥がして齧る。
齧る……
齧る……
齧る…………?
歯が通らない、アホ硬い。
昨日の団子は恐ろしくかんぴんたんであった。
お茶碗に入れたご飯をそのまま1日ほっとけば、ガチガチになるんだから、いいとこの団子も同じである。
これがなぜか、スーパーのパックの団子だと案外そうでもなかったりするのだが。
私は非常に残念に思いながら手にしていた食えない団子を箱の中へと手放した。


完。