「診察室から」のテーマでは、アトピーだけに関わらず、さまざまな皮膚の病気で、アトピー治療に役立つと思われる日々の出来事を綴ってゆきます。
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昨日の出来事からお話しましょう。
昨日、「1週間ほど前から、顔に急に湿疹ができた」という20代の女性が受診しました。見ると、確かに、頬や口のまわりにわずかですが、ざらざらしたところがいくつかあります。
体にはなく顔だけとなると、石鹸や基礎化粧、メイクなどによるかぶれが最も疑わしく、最初にその可能性がないか考える必要があります。
ですが、その女性に質問したところ、「最近何も変えてない」とのこと。
うーん、かぶれ路線ははずれかなあ？おかしいなあ？と思って、こんな質問をしてみました。
「最近、急に顔が乾燥するようになったってことありませんか？ほら、最近、急に寒くなってきたから」
その答えは、「イエス」「そうなんです、顔がとてもかさかさするんです」
あ、なるほど「乾燥するから外からの刺激に弱くなって顔に湿疹ができた」ってわけですね！
と診断を「乾燥性湿疹」として、ステロイドを処方しておしまい、ではアトピー先生の名がすたります！ここからは、綾子先生の独自の診察が続きます。
私：「顔が乾燥するってことだけれど、身体のほかの場所は乾燥しない？」
患者さん：「そうなんです！すごく体のほかの部位も乾燥してきました！とくにすねがひどく乾燥します！」
私：「あー、手足がすごく冷たくなるでしょう？」
患者さん：「そうなんです！」
私：「じゃあ、生理痛もひどいでしょう！」
患者さん：「はい。先月はあまりにひどくて一日目は仕事を早退させてもらったくらいです」
私：「あ～、それは骨盤まわりの血流が悪いからですねえ。仕事は座りっぱなしじゃない？座ったとき、すぐに姿勢悪くなるでしょう？腹筋ないでしょう？」
患者さん：「たしかに、仕事は仕事は座りっぱなしですし、腹筋ないです。座っていると、姿勢悪くなってしまいます。」
私：「腹筋ないと、骨盤まわりの血流が悪くなるだけじゃなくて、早くおばちゃん腹（！）になるから、ちゃんと運動しなきゃねえ。骨盤の運動はねえ・・・」
と突然、ここからは皮膚科診察室とは思えない、医者と患者さんが一緒になって運動の練習！
患者さん：「これ、ちょっとやるだけで、腹筋にきます！」
私：「そうでしょう？お腹やせるよお！（笑）それに、すぐに体が温かくなってこない？」
患者さん：「本当だ！体がぽかぽかしてきました！」
こんな皮膚科見たことないでしょう？（＾＾）
そして、さらに診察は続きます。
私：「足が冷えるってことだけど、いつもどうやって歩いてるのか、歩いて見せて」
患者さん：「こんな風かなあ・・・」
私：「わあ、膝が曲がってるよ！膝から下でしか歩いていないよ！正しい歩き方はねえ・・・」
と、今度は二人して正しい歩きかたの練習。
私：「正しいある方をすると、おしりまで筋肉使っているなあ、って感じするでしょう？いい運動になるなあ、って感じしない？」
患者さん：「こんな歩き方したことなかったです！この歩き方すごいですねえ。この歩き方なら確かに体がぽかぽかしてきそうです!」
とようやく、本日の診察終了。この顔のごくわずかな湿疹で受診した患者さんは
なんと骨盤運動と正しい歩き方を学んで診察室を後にしました！
おもしろいでしょう？顔のごくわずかな湿疹からここまで見えるんですよ！
この患者さんにはもちろん弱いステロイドを処方しましたが、彼女は私の診察で、
「ただの湿疹」から「たくさんの体の問題点」を見つけることができました。
そう、「湿疹は優秀な先生」なんですよね！本気で向き合えば、どうして体が「湿疹」という形でサインを送ってきたかが見えるのです！
アトピーも同じです。
単純な湿疹よりも要因が複雑に絡み合っているので、やや難易度高いですが、
それでも、ゆっくりゆっくりその絡み合った糸を解きほぐせば、ちゃんと見えてきます。
最近の私のアトピー、湿疹診察は、気分は名探偵ホームズです。難解なパズルを解くかのように、ひとつひとつ解明して、根治に導きます。
診察室を後にするとき、患者さんの表情はいつも「目からうろこ！」になって、でもまだ1回目の診察で話を聞いただけなのに「まるで治ったかのような」顔です。「そんなこと、どこの皮膚科でも聞いたことない！」でも、どこの皮膚科でも聞いたことなかったから、今まで治らなかったんでしょう？そうなんですよね。（＾＾）