奇奇怪怪 ~出会い、矛盾、心、化~1







          序章





 闇。空一面を多い尽くす闇。


―この闇は俺の心に根を張っている奴と同じだな。


 光。空を少しずつ明るく照らし出す光。


―俺の心にも温かい光がささないかな。


 明るくなり始めた空を見ながら、男は力なく笑った。





「空が白んできたねぇ。」


 静まり返った教室に青年の声が響き渡る。


 制服を身にまとった青年は、空を眺め、ニヤリと口元を歪ませた。


 『教室』と『青年』


 傍から見れば、特に何とも思わぬ組み合わせ。


 だが決定的に浮いた存在がその教室に存在した。


 制服を着た青年の足元には、拷問でも受けたかのような風体の青年が一人、横たわっていた。


 『教室』と『拷問』


 そんな無縁とも思われる言葉が、その場所に出来上がっていた。


 絵でも、加工写真でも、ましてや誰かの妄想でもなく。


 現実に、その『地獄絵図』は出来上がっていた。


 その絵を楽しむかの如く、制服の少年は口元をより一層歪ませた。





―さっきからキラキラと光っているのは何だろう。


 まだ正常に物を認識出来る右目を薄く開ける。


―嗚呼。何だ、ナイフか。


 少年の視線の先には、確かにナイフが存在した。


 ナイフの先には赤黒い血液が朝日に照らされ、怪しく光っている。


 誰の血なのか。その答えは彼自身が一番よく分かっていた。


―俺の血ってあんな赤黒い色してんだな・・・。





「さぁーてと。そろそろ解放してあげようか?」


 手の中でナイフをもてあそんでいた制服姿の青年は、足元の青年に話しかけた。


「・・・・」


「無反応かよ」


 『解放』


 それは『死』


 彼にもそれぐらいの事は理解できた。


 だがいたぶられ続けた青年の精神の限界はもうすぐそこまできている。


―この苦しみから解放されるなら死んでもいいかな。


 死後の世界がどうなっているかも分からないのに、そんなことをふと思う。


そんな気持ちを察したかのように、制服姿の青年は笑顔を絶やさぬまま言葉を紡ぎだす。


「解放・・・してほしぃ?」


 首筋にナイフがあてられ、赤黒い血が溢れ出す。


「解放・・・して・・くださ・・い・・」


 青年は小さな子供に見せるような優しい笑みをみせると・・。


「まぁ正しくは解放されないんだけどねっ!!」


 ナイフを横一直線に切りつけた。


「あーあ。服が汚れちゃったよー。首の骨を折ったほうのが良かったかなぁ?」


 服の赤い染みとすでに絶命した青年を見比べながら。


「ま、それはまた今度でいいや。」


 楽しそうに、楽しそうに、楽しそうに・・・。


「今回の子は割合長くもってくれたしねぇー。」


 彼は、笑う。





「如何様に処理いたしますか?」


 すでに帰ろうとしていた制服姿の青年の背に声がかかる。


 青年が振り向くと、そこには着物姿の少女が佇んでいた。


「決まってるだろ。埋めとけ。」


 彼は大して驚いた様子も無く、淡々と言い放つ。


「了解しました。」


 少女もまた、事務的に答えを返した。


 そして手馴れたように死体を片付け始める。


 


 薄暗い廊下で彼は笑う。


「今回のは何に化けて出てくるのかなぁ?」


 楽しそうに、楽しそうに、楽しそうに―――






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すがすがしい朝が来た。


 雲一つ無い、晴れ渡った空。


 すっと冷たい空気。


―嗚呼。何て気分が良いのだろう!!


 今日高校生デビューする大津亮太郎は、期待に膨らんだ胸を更に膨らませるように、大きく深呼吸をした。


 新しい制服を着て、改めて鏡の前に立ってみる。


 少し大人びた自分が鏡の向こうで待っていた。




「行って来まーす!!」


 元気にあいさつをして、小走りで道を走ってゆく、彼。


 数秒後には鞄を置き忘れてきたのに気づき、家に引き返すこととなる、少年。


 数分後には彼の人生を大きく左右する人物と出会うこととなる、亮太郎。


 数時間後には―――――






‡ † ‡ † ‡ † ‡ † ‡ † ‡ † ‡ † ‡






―何処だぁ?ここは。


 男はこれで何度目かの同じ質問を自分自身にもう一度問う。


 だが、答えは返ってこない。




 男が目を覚ますと、そこは何処かの路地裏だった。


 まだ完全に明るくなっていないというのに、沢山の人の声が聞こえた。


 路地裏の近くには街が広がっていた。


 とてもとても大きな街が。




―何処だ。何処だ。何処だ。何処なんだっ!!


 何度も何度も問うが、頭は答えを返してはくれない。


 まるで答えるための資料が無い、とでも言うかのように・・・。


「ああ、そうか。」


 男は何とも単純な答えを見つけた。


「俺、記憶喪失なんだ。」


 ただし何の役にも立たない答えだったが。










●あとがき●


 初めましてorこんにちは!雷千です!!


 本当はこの小説の前に「妖共」の方をUPしたかったのですが、今ちょっと行き詰ってしまっているのでさきにこちらをUPさせていただきました。


 この「奇奇怪怪」なんですが、私もよく話しの先がどうなるのかよく分からぬまま書いています。とりあえず、前から書いてみたかったミステリーものをやってみようという思惑で作っているのですが・・・(今回最初の部分少しグロテスクでしたよね。苦手だった方、すいません・・・)。これからもこの小説には、自分がやりたいことをどんどんと詰め込んでみる予定です。これに少しでも付き合っていただける方がいらしたら、幸いです。


 最後になりましたが、この小説を作るにあたってお手伝いしてもらった私の某友人、そしてこれを読んで下さった読者の皆様に・・・。ありがとうございました!!




☆余談☆


 小説の感想や、アドバイス等ありましたらコメ下さると嬉しいです。