昨年、狭心症で倒れて、翌朝病院の集中治療室のベッドで目を覚ましたときの感覚が、何かに似ているとずっと思っていたものの、思い出せないでいました。
ところが、朝起きたら思うように動けない夢を先日見て、これって大昔読んだ小説にあったことにふと気づきました。小説の題名を思い出すまでには、それほど時間はかかりませんでした。
カフカの「変身」です。
『ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変わってしまっているのに気づいた・・・・』という文章から始まる小説で、読んだことがなくてもこの冒頭の文章は知っている人は多いと思います。
学生のときは、不思議な小説だと思っただけで、特にこれといった印象を受けませんでしたが、先日、電子書籍であらためて読み直すと、この小説の深さをよく感じることができました。
一家の大黒柱の主人公が虫に変身したのではなく、たぶんなんらかの事故で重度の身体障害者になったんですね。徐々に家族が疲弊していき、主人公が死んでハッピーエンドという話ですが、現代に置き換えると、怪我、病気、ひきこもり、介護など誰にでも起こる問題であり、生々しい恐怖を感じました。
昨年私は身体障害者になり、退職を余儀なくされるまではいきませんでしたが、重要なプロジェクトから外れ収入も大幅に減少しました。子どもは二人いて、二人とも大学生です。障害年金を申請していて、支給される見込みですが、減収分を補うまでにはいきません。
主人公のように、まったく動けなくなり収入が途絶えてしまった訳ではなく、かえって家族と過ごす時間も増え絆が強くなったような気がしています(自分だけかもしれませんが)。
しかし、もし、介護が必要なくらいの重い後遺症が残ってしまい、退職を余儀なくされていたら、さらに、日本のように障害年金等がない国であったとしたら、主人公と同じような境遇になっていたかもしれないと思うと怖くなりました。
アルベール・カミュの『異邦人』などとならんで、カフカの『変身』や『審判』は「不条理の文学」と呼ばれたりしているそうです。
いろいろと読み直してみようかと思います。
↓ 4分弱で名作のあらすじが理解できます