ファルについて行くか、仲間との生活を続けるか…。クロはどちらを選ぶのか。
それでは安定の妄想でゆきます(^^ゞ
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第9話〈記憶の無い者〉
クロはファルの手を掴み――
その手を振り払った。
クロ「…ぼくは協力できない。」
ファル「な…ヴァル、シアナス様との約束破る気な…?」
クロ「約束って言っても…もうシアナスはいないし、神だって代が変わってる。
確かにぼくらは神にひどい目に合わされたんだろうけど、今は自由に生きられる。それで良いんじゃ」
ファル「分かってないな!!」
ファルは地面に刺さった槍を引き抜き、クロの顔に向けた。
ファルの顔には怒りが滲み出ているようだ。
ファル「ヴァルは記憶が無いからそんな事が言えるのな!ボくらが受けた屈辱は、そんな風に割り切れるものじゃないな…
ヴァルが協力しないなら、ボく一人でやるんだな。」
クロ「…ごめんな。ぼくには記憶が無いから…」
クロの目は悲しそうに揺れる。
ファルはそれを見て一瞬うろたえたが、槍を下げると竜洞穴の出口へ跳躍した。
ファル「せいぜい…神に守られてる人間と仲良しごっこしてなよな…」
そう言い残すと、ファルはその場を去っていった。
残されたクロは、竜洞穴の中央にある黒い結晶を見つめる。
クロ「仲良しごっこ…か。」
ぼくには神に何をされたかの記憶がない。許せないのは分かるが、ファルの憎悪を完全に理解することは出来ない。
あそこまでシアナスとの約束を守ろうとする気持ちも。
記憶があるか無いかで、これほどまでに差が生まれるとは。
ぼくも記憶を失う前は、ファルと同じ感情を抱いていたんだろうか。
そうなら、ぼくはファルと一緒に行った方が良かったのだろうか。
その答えが出ないまま、ぼくはいつの間にかソフィアの街まで戻ってきていた。
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シロ「――あっ、やっと帰ってきた!」
昼過ぎ。
シロは酒場の入り口の前で仁王立ちして、帰ってきたクロに手を振る。
シロ「クロが帰ってこないから、いつまでたっても昼ご飯食べられないよ!」
クロ「ごめん…」
しょぼんとするクロを見て、シロはため息をつく。
シロ「もう、皆待ってるからはやく行こっ!」
シロはクロの手を引く。
しかし、クロは不意に立ち止まった。
クロ「シロ…ぼくは、これからもここに居ていいと思う?」
シロ「はあぁ?何でそんなバカみたいなこと…」
シロはクロを見て口を閉じた。
クロの顔はいつも通り無表情のまま。
しかし、繋いだクロの手には力がこもっていた。
真剣に訊いてるんだ。
そう感じたシロは、もう片方の手も繋いだ手の上に乗せた。
シロ「当たり前でしょ?クロはギルドの仲間なんだから。」
真っ直ぐに、ちゃんと伝わるように、
クロの目を見て答える。
シロが映ったクロの瞳は一瞬揺らぎ、やわらかく微笑んだ。こういうクロの笑顔はめったに見ることがない。
シロ「それに、エルデンバウムクーヘンの再現もしてもらわなくっちゃ困るからね!!」
一瞬にして、クロの顔から笑顔が消えた。
見るからにげんなりとした顔。
以前に試した再現が不評で、クロは料理に関して未だ立ち直れていないのだ。
クロ「え…まだ諦めてなかったの?あれ作るのもう嫌なんだけど。」
シロ「そんなこと言わない!ほらはやく、私もお腹すいてるんだからね!」
クロ「…ぼくの喜び返して。」
クロは引きずられるように酒場の中へ入っていった…
To be continued...
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帰ってみると、そこにはいつもの仲間。
一方のファルはどう動くのか…
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