サッカーが持つ力 | 杉浦文哉オフィシャルブログ「スポーツライターは現場でしょ!?」Powered by Ameba

サッカーが持つ力

J1も残り1節。鹿島、名古屋に続いて川崎にもわずかだが優勝の可能性が残っている。
川崎といえば、圧倒的な攻撃力で相手に打ち勝つサッカーが目立つが、ここ2試合は無失点が続いている。
特に昨日の神戸戦では、GKの川島永嗣が大活躍。TVのスポーツニュースで滅多に取り上げられることが無い彼がどの番組でもほとんど出ていたことからも、点差だけからではわからない苦戦がこの試合にはあった。

引き分けでも優勝争いから脱落する状況だから負けられない試合だったが、川島にとって負けられない理由がもう1つあった。

「川島ファンの小学6年生が手術するらしい」

フロンターレのスタッフに知り合いのサポーターから連絡があったのが今年の初めだった。その子は所属するサッカークラブでのポジションはGKで、地元川崎の守護神のファンになったという。卒業文集にはGKとして活躍する夢も書かれており、4月からは中学に入ってサッカーを続けるつもりだった。

その矢先に判明したのが右ひざの骨肉腫だった。

入院生活が始まり、無菌状態を保つために面会者は限られていた。あまりにも重い病気のため、両親は骨肉腫という病名を子供に明かせずにいた。

今シーズン、川島はチームだけでなく代表合宿などもあったため多忙を極めていたため、手紙かビデオレターで励まそうという話もあった。しかし、子供からすればつらい入院生活で、親も子供がかわいそうでならない。その辛さを自分が行くことで解消されるのならば、わずかな時間でも行くべきと、午後の練習が終わってから、面会時間ギリギリに病院へ駆けつけた。

川島のGK用ユニホームやサインといった金額にすれば2万円くらいのプレゼントと2時間ほどの会話だが、子供にとってみればお金に替えられない一番の良薬で、子供の笑顔は母親にとって最高の感激だった。

面会後にみんなで撮った写真は病気で苦しんでいるとは思えないほどの笑顔があり、その4ヵ月後、同じ笑顔が等々力競技場で再び見られた。

医者にも先生にも弁護士や政治家にもできない事がサッカー選手にはできる可能性を持っている。サッカーのありがたさを感じた出来事だった。


ちなみに川島は今シーズン、地元小学生をホームゲームに招待している。