「素性を調べた」
「分からないかい?」
「君のお母さんだ」
突き付けられた現実
現在の母だと言うたくさんの写真を見せられる
「残念だけど記憶がないんだ」
「君のお母さんには」
「それで…」
「君を息子として迎えたい」
男は言う
「君の父親になりたい」
「考えさせて下さい」
つばきは言う
とにかく怖かった
母を見るのが
何故か
つばきには
現実を受け入れる事が出来ないでいた
もちろん生身の母に会うことも
出来ないほどに
恐れていた
その恐れが何なのかも分からないまま
「何故母は中さんに手紙や写真なんかを?」
「それは君の母さんがあのドラマのファンだからだよ」
「たいそう気に入ってね」
「お母さんは君と中くんと、言ったかな、その彼と二人のドラマは欠かさず観ていたよ」
「写真は恐らく昔から持っていた唯一の物だろう」
「君のお母さんは海で溺れ」
「しかし浅瀬まで流れついて奇跡的に助かった」
「そして私と出会った」
「運命なのかもしれない」
「記憶は失ってしまったが」
「まさか君のような立派な息子が居たなんてね」
「私は運命を感じてる」
男が肩に触れようとしたら
つばきは逃げるようにその手をすっとかわす