「あのさ、「売り」とかやめれば?」
ケンはテラの腕を掴んだ

昨日サラリーマンとホテルに入るのを見た

一昨日は違う男と、

ケンは掴んだ手を離した

「してないし「売り」なんか」
テラは笑う

「じゃー何で」
「僕の下着姿の写真が欲しいんだって」
またテラは笑う
「仮にもアイドルだし」
ケンは理解が出来ない
「だって面白いんだもん、喜んでカメラ向けてくんの」
「自覚持てば?アイドルとして確固たる地位を得てる」
「どいつもバカで面白い」
今度は乾いた笑い
「バカはお前だろ」
ケンが言うとテラはけたたましく笑った
「何必死になってんの?僕なんかの事に」
「気になるから、バカやってるってわかってんならやめろよ」
通用しないとわかっていてもつい熱くなってしまうケン
「僕のこと好きなんだ?」
「気になるだけ、好きじゃない」

「それ好きって事だよ」
「俺はつばきが好きだ」
「嘘」
テラはそう言って笑った
「コミと僕は恋人じゃないよ」
「彼はマッキーを見てるから」
「俺はつばき以外好きにならない」
「強がっちゃって」
テラはケンをつついた
それだけでケンの鼓動は早鐘のよう

こんなのおかしい
認めたくないとケンは思った

確かにテラは可愛い

しかしつばきほどじゃない
あの燃えるような情熱なんかじゃないんだ

ただ甘酸っぱいだけ

少しだけテラの事を考えると胸がざわめく
ケンはそれも全面否定したかったが事実なので無理だった
これが本当に恋愛感情なら
つばきへの気持ちは
結ばれた事の意味はどこにあるのか

胸の炎だけが証だった
つばきを愛し
信じてきた

それが真実ではないのか?
ケンは揺れた

テラの言葉に確信が持てなくなってきていた
まだつばきの肌の感触が頭に焼き付いている
一度結ばれただけなのに消えないでいる炎

しかしテラはその炎に風をおこし

胸の炎は揺らいでいる

もしかしてこのまま消えてしまうかもしれない

ケンは怖かった

心がテラにどんどんしんしょくされていく事が

打ち消したかった
なにもかも
つばき以外は必要ないと思ってきたのに
どんなに痛くても冷たくても
つばきでいいと心に決めていたのに
テラはそんなケンの心に風をおこした

台風の目のように自分の心を乱す存在

それがテラだった

ケンにとってテラは驚異的な存在だった