まだ朝靄がかかる早朝、シンはマカオの空港へと降り立った。
再びこの地を踏むのがこれ程までに早いなど誰が想像したであろうか。
チェギョンに会える事を素直に喜べない状況の中必ず敵の正体を掴んでみせる、
という決意を胸にタラップを進んでいく。
階下にはすでに領事館の物であろう迎えの車が待機していた。
そこには見慣れた人物と深々と頭を下げ顔が見えない者がいた。
「殿下、この度の事弁明のしようもございません。」
コン内官の隣にいるその人物は頭を上げることなく謝り続けた。
頭を上げれないでいる彼の声には聞き覚えがあった。
「ファン館長あなたでしたか、このような時間にあなたにまで出迎えて頂けるとは。」
「とんでもございません。私の管理下で起こしてしまった事故です。どのような処分も覚悟しております。」
「あなたの処分など考えてもいませんでした。これからの対応に期待します。しかし・・・。
もしマカオにいる間妃宮の身に再び何かあれば領事館すべての人間の職がなくなるものと思ってください。」
軽いジョークのつもりで言った言葉であったが、その場の空気はまるで北極点にいるかのように凍りつき皆震え上がってしまった。
いつもならばチェギョンがすかさず割って入り収集を付けてくれるのだが今日はそうはいかない。
頭を抱えたコン内官は話をすり返る事にした。
「殿下、お話は後ほどで。まずは妃宮様の元に参りましょう。」
一同がホッと肩を撫で下ろす中シンだけが事の成り行きを理解できずにいた・・・・。
車に乗り込んだシンは一路都内の病院へと向かっていた。
その途中コン内官からある知らせが入る。
「殿下、病院の入り口にどこからもれたのか韓国の記者が数名待ち伏せているとの事です。
いかがなさいますか?」
些細な情報でもハイエナのように嗅ぎ付ける奴ら、韓国はもちろんの事このマカオでもチェギョンの事故についてはマスコミにもれぬよう対策をとっていたにも関わらずである。
幸いコン内官が偶然マカオに居た為彼の判断で情報の規制ができていた。
その為事故の情報は早い段階で隠されていたはず。
誰かがマスコミにリークしたのか?
韓国側からもれているならば事件を起こした奴らであろうか。
単にネットの情報にまで手が及ばなかったのであろうか。
調べる必要がありそうだけれども、今マスコミを避ける事はできそうもない。
「そのままつけてくれ。」
「かしこまりました。」
まだ人々が活動するには早い時間。
流れる景色には誰も居ない。
ただ小鳥のさえずりが響き渡っている。
太陽はゆったりと昇り始め、様々な建物に反射しては色を落とす。
マカオの空は眩しい光の渦に包まれていく。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
Next → Ep5の②