ようやく落ち着きを取り戻した私は冷静になった頭を働かせていた。
あと2週間かぁ。部屋の片付けが大変ね。
あぁ!それよりも仕事どうしたらいいのかしら?
「ファン館長さん、お仕事はどうしたらいいですか?」
「ご心配なく、すでに博物館の方には今週いっぱいでという事を私から話しておきました。」
帰国できる事はとっても嬉しいのだけれど、あの博物館で学べるのもあと少しなのか、
そう思うと少しばかり残念でもある。
「妃宮様、私が参りましたのはもう一つこちらの書類のご説明をさせて頂くためでございます。」
コン内官のおじさんから渡されたのはどこから持ってきたのか大きな茶封筒だった。
「これはなに?」
聞きながらすでに中身をだしている私はその書類の表紙に目を奪われる。
「王立大学編入学学生募集要項?」
たどたどしく読み上げた文字は一瞬なんのコトかわからなかった。
大学?編入?誰が?何の話?
??????
疑問符が羅列する。
「9月より大学へ編入できるよう殿下が取り計らってくださいました。
あとはこちらに妃宮様のサインを頂くだけでございます。」
シン君がそんな事まで考えていてくれたなんて。
またまた出てきそうな涙を必死で引っ込めると書類に目を通す。
「妃宮様は王立大学の美術学部への編入となりますが、殿下も同じ学校にお通いですし、
妃宮様の高校のお友達も同じ学部に在学されている事と存じます。」
ガンヒョンからキャンパスライフを謳歌してるなんて電話をもらったけどそこに私も通えるなんて
本当に夢みたいだわ。
コン内官のおじさんにすすめられるがままサインをしていく私は、夢見るキャンパスライフに思いを馳せていた。
「そういえばコン内官のおじさんはすぐに韓国へ戻るんですか?」
「はい、妃宮様。捺印頂いた書類と共にすぐに手続きをしにまいりませんと。」
「そうですか。少しだけ時間を頂いてもいいですか?シン君に返事を書きたいの。」
「えぇ構いません。私はその間チェ尚宮と今後の日程について打ち合わせがありますので、
どうぞごゆっくりお書きください。」
「それでは私は便箋を探してきましょう。」
ファン館長さんが探してきてくれた便箋は淡いピンク色でとても綺麗な花の絵が書いてある。
私の書く手紙なんかにはちょっともったいないくらいの便箋だ。
便箋に負けないよう丁寧に丁寧に文字を書き上げる。
シン君はこの手紙を読んだら喜んでくれるかしら?
なんて事を考えるとにやけてきてしまうから急いで書き上げてしまおう。
「じゃあこれシン君に渡してください。」
「はい、確かにお預かりしました。必ず殿下にお届けいたします。」
「よろしくお願いしますね。」
ふと外を見ると来たときは晴れていた空から雨が降り始めていた。
雨は次第に勢いを増し遠くでは雷が鳴り響いている。
スコールのような通り雨ではなさそうだ。
「雨が降ってきちゃったね。お姉さんとかいものがてら歩いて 帰るつもりだったのに、傘もないし。」
「妃宮様、うちの者が送らせて頂きますよ。」
「色々とすみません。」
雨はどんどん強くなるばかり、だが不思議と嫌な気はしなかった。
今までの辛い日々を洗い流してくれるかのような清々しささえ感じる。
ただ遠くで感じる雷鳴だけが胸をざわつかせていた。
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