帰りの飛行機の中、俺は自分の言動を悔いていた。
そんな事あるはずがないと心の中ではわかっていながらも
口が開くのを誰も止めてはくれなかった。
自分の悪い癖だとはわかっているが、そう簡単に直せるものではない。
チェギョンにもいわれたな 「いつでも本当のことを・・・・。」
でも俺は本当の心を出すのが苦手だ。
すぐに他の事をもちだしては、大切な本当に伝えなくてはいけない事を隠そうとする。
窓の外を見下ろすとマカオの街はすでに小さく一瞬で雲によって覆い隠されてしまった。
分厚い雲はマカオのまぶしい夜景を飲み込んでいく。
「はぁ・・・。」
気だるい吐息が機内にもれる。
いや本当にチェギョンに男ができたのかもしれないと思ってしまったのかもしれない。
自分に自身がもてなかった。皇太子でない自分などと。
いやそんな自分でもチェギョンは受け入れてくれた、だからこそ本当の結婚式をあげたのだ。
そうただ単に嫉妬してしまったのではないか、チェギョンに他に男がとかそういう問題ではなく
チェギョンとただ挨拶を交わしていた男にさえ、マカオでのチェギョンの生活に関わっていた人にさえ。
ああああ、俺は何を考えてるんだ。
嫉妬という言葉にうまく考えがまとまらない。
額に手をつくと、その手がやけに冷たい事に妙にいらつきを覚える。
自分の感情がコントロールできず、それをチェギョンにあたってしまうなんて。
「シン、着いたらきちんと妃宮に謝るのですよ」
チェギョンの容態は軽い食あたりによる吐き気ということで
今は薬を飲み落ち着いていると、離陸前にチェ尚宮から電話が入った。
「はい、わかっていますお祖母様。」
わかってはいるがあいつは電話にでてくれるだろうか。
ひどく怒らせてしまった。
別れ際の悲しい顔を思い出してはまた吐息がもれる。
「はぁぁ・・・・。」
またしてもこんな形で離ればなれになるとはマカオに来る前は思いもしなかった。
「シンは本当に妃宮の事になると人が変わったようだな。」
お祖母様が笑いをこらえながらこちらを見ている。
俺は少し恥ずかしさを覚え視線をはずしてしまったが、あの時のようにお祖母様に相談したくなり
自分の気を落ち着かせ口を開いた。
「お祖母様、自分でも戸惑ってしまいます。チェギョンの事になるといつも自分を見失ってしまうようで。」
皇太子として自分の感情をコントロールする事など幼い頃より教育されてきたはずなのに、そんな事すら忘れてしまう。
自分が自分でないような感覚。自分の心にこんな気持ちがあったのかとさえ思える。
「ほっほっほ、それでいいのですよ。シン、妃宮を愛しているのだな。
妃宮とそなたはまだ若い、時にはぶつかることもあるでしょう。
けれど、喧嘩をする事でお互い相手のことをより理解できるというものです。」
長年生きてきた者の重みなのだろうか、お祖母様の言葉がすんなりと頭に入ってくる。
「妃宮がなぜあそこまで怒ったのか、そして妃宮が今なにを想っているのか考えてごらんなさい。
互いの気持ちを想う事それこそ愛を深める近道かもしれませんね
愛は一方通行ではいけませんよ。さぁ年寄りのお説教はこれくらいにしますか。」
チェギョンの気持ちか・・・。
そうしてまた窓の外に視線を移す。
機内は静まりかえりその静寂に俺は少し孤独を感じていた。
雲は厚くその先はまだ見ることはかなわなかった。
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