紅梅が可愛らしく青空に映えた今日。春の到来かと思いきや、那須ではかなり雪が降ったそうで、時折こちらにも真っ白い雪が吹っかけた。昨日の啓蟄で地上を覗いた虫たちも、慌てて頭を引っ込めたことだろう。
テレビ番組やネットニュースを見なくなって久しいが、今、ブログを書こうとパソコンを開けたら、たまたまYahoo!ニュースが目に入った。見出しに書いてあった文字に驚き、思わず読み返した。
「殺生石真っ二つ しめ縄も切れる」
九尾の狐(きつね)伝説で知られる栃木県那須町湯本の国指定名勝「殺生石」が真っ二つに割れたことが5日、分かった。関係者によると数年前からひびが入っていたことが確認されており、自然に割れたとみられる。
長い封印がとけて恐ろしい妖狐復活?それとも妖狐の魔力が完全に消滅したため、巨岩もしめ縄も役目を終えたのか?実際は疑うことなき自然現象らしいけれど、本当に信じられないことばかり起きる世の中だから、色々あり得る気もしたりして。
九尾の狐の話、これでもかというくらい、わが家ではくり返しくり返しよく聞かされて育ったものだ。主に語り担当は祖父。ある夏、みんなで那須のホテルへ泊まりに行ったときに初めて聞かされた。その夜は、薄明かりの部屋の押入れに大きく口を開いた九尾の狐の影が浮かんでいるように見えて、あまりに恐ろしく、トイレに行けなかった。祖父をちょっと恨めしく思ったものだ。
祖父の語り口にはリアリティーがあって、子ども相手でも適当に話さない。だから、ジャンルを問わずどんな話も面白く、祖父が話してくれたことは今でも鮮やかに覚えている。
この「殺生石真っ二つ」のニュースも祖父だったら、なんと伝えるだろう。ネットやYou Tubeで情報として知るのと、祖父みたいな大人が話してきかせてくれるのとでは、心への残り方が違うはずだ。あの頃はわからなくても、今ではどんなに子供の想像力を大きく膨らませるための糧となってくれたかがわかる。ありがたや、ありがたや。現役のおじいちゃん、おばあちゃん、ぜひ頑張っておくれよ。
九尾の狐の伝説は私にとって、幸せなノスタルジーと、トイレを必死に我慢しているあの夜の切なさが入り混じった、忘れがたい特別な思い出だ。