「風の歌を聴け」/村上 春樹 | 文学よみっパナシ

「風の歌を聴け」/村上 春樹

「風の歌を聴け」/村上春樹 講談社文庫 定価381円 群像新人賞受賞

 今年で作家デビュー25年!ということで今書店はスゴイ。新刊の「アフターダーク」もずらっ~と並んでおります。え~実は,本好きとか言ってるくせに私は村上春樹をちゃんと読んだことが今までなかった‥。だって大学時代の文学部の男子学生はみんなハルキストで,ハルキい~よ。ハルキ~。とあまりにもハルキ人気は高く,もうそれだけでお腹いっぱーい,になってしまったから。人気ものには食指が動かない。昔はそんなヒネクレ者だった。
でも。最近になってなんだか村上春樹を読んでみたくなった。やっぱりみんないいっていうし,なんだか気になるし。と素直?になった27歳の私。人間って変わる。
そこで人から勧めてもらったのが,「風の歌を聴け」。言わずと知れた春樹のデビュー作。
へええ。そうか村上春樹ってこういう文章を書くんだ。実は勝手にもっとドラマティックなストーリーがあって切ない感じの恋愛話なんかが大人っぽく展開するんだろうなと思っていたので。いかにも20代(男)らしい,現実への失望や倦怠感が漂う作品ではあるけれど,人間だれしもが胸の奥にしまっている根本的な不安や憂鬱が,そっけない文章だけにじわじわっ~と沁み込んで来るなあ。
「人生には意味が無い」
「人間には何一つ得ること無いまま生き,死んでいかなくてはならない」
こういう感覚って普段はあまり直視しないように,脳みその奥の奥に鍵をかけてしまって置くものだ。哲学者じゃないかぎり。そうじゃないと正常でいられなくなってしまう。でもときどきそいつと向き合わないと余計苦しくなる。
そんなことを考えた。
特に好きだった一文で〆。
「様々な人間がやってきて僕に語りかけ,まるで橋をわたるように音をたてて僕の上を通り過ぎ,そして二度と戻ってはこなかった。」